【フリーレントとは】空室対策に有効?仕組みやメリット・デメリットを解説します

2024.06.26更新

この記事の監修者

逆瀬川 勇造
逆瀬川 勇造

AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

【フリーレントとは】空室対策に有効?仕組みやメリット・デメリットを解説します

空室対策にはフリーレント方法があります。フリーレントを活用するうえでのメリット・デメリットを紹介します。

フリーレントを空室対策に効果的に活用するためにも、
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目次

フリーレントとは?その仕組み

フリーレントとは、新しく入居者を迎える際に一定期間の家賃を免除することで、たとえば「フリーレント2か月」であれば、入居してから2か月間家賃を受け取りません。そうすることで、入居者の負担感を少なくし、入居しやすくする狙いがあります。

大家さんとしては、たとえ最初の2か月家賃を受け取らなかったとしてもその後1~2年、長い場合には、その先数年間の家賃を受け取れます。

また、空室改善策のひとつとして家賃を下げるより将来的な効果を考えると有効なことがあります。なお、多くの場合フリーレントで免除するのは家賃だけで、共益費や管理費などを別に取っていればその費用は受け取ることができます。フリーレントは家賃を無料にするだけなので、大家さんが決断すればすぐに導入することが可能です

フリーレントが増えている背景

フリーレントは、大家さんが空室対策として行うものです。野村総合研究所から発表された「日本の不動産投資市場 2018」によると、賃貸住宅の供給戸数は全住宅戸数の増加率(1998年比2013年119%)を上回る水準で推移(1998年比2013年130%)しています。このように、賃貸住宅の供給が行われる一方で需要がそれに追いついておらず、とくに首都圏を中心に空室率の上昇が続いています

なお、これは2015年1月に行われた税制改正により、相続税の基礎控除枠が縮小したことにより相続対策として賃貸住宅の建設が増加したことが原因のひとつにもなっています。このような、賃貸住宅の供給過剰により入居者争いが激化し、競争力を高めるための空室対策のひとつとしてフリーレントがよく見られるようになっているのです

フリーレントが空室対策に効果的と言われる理由

フリーレントはなぜ空室対策に効果的なのでしょうか。その理由について詳しく見ていきましょう。

他物件との差別化ができる

まず、ほかの物件でフリーレントを実施していない場合には、フリーレントを実施していることで差別化を図ることができます。賃貸物件の供給過剰により、他物件との差別化が重要となっており、同じエリアで同じような家賃相場で戦っていてはなかなか差別化ができません。

フリーレントであればすぐに取り入れることができ、差別化を図ることが可能です。

入居者へのアピール材料となる

フリーレントを採用していることで、内見者が入居を決める理由となることもあります。1~2か月の家賃を支払わなくてよいということは、数万円~十数万円分はお金が浮くことになり、入居者としては嬉しいものです。「期間限定」などとすれば、その場で入居を決めるための後押しともなるでしょう。

入居者の引っ越し費用の負担が減る

引っ越しには、前の住居から新居への引っ越し費用や新居の敷金・礼金、新しく買いそろえる家具など何かとお金が入用です。そうした状況の中、最初の1~2か月の家賃を支払わなくてよいフリーレントは、とくにお金のない学生などに人気があります

短期間の退去に対する抑制効果が期待できる

フリーレントは「契約期間中に解約すると、最初のフリーレント期間分の家賃を請求する」といったペナルティを付ける特約を設けるのが一般的です。実際に、途中で退去してしまえばフリーレント分を回収できますし、フリーレント分を受け取れなくても、期間中は解約を抑制する効果を期待できます

フリーレントのメリット

フリーレントのメリットには大家さん側のメリットと入居者側のメリットが存在します。双方のメリットについて詳しく見ていきましょう。

大家さん側のメリット

まずは、大家さん側のメリットです。

入居者が見つかりやすい

「フリーレントが空室対策に効果的と言われる理由」でお伝えしたように、フリーレントには他物件との差別化や、入居者へのアピール材料としての効果を期待でき、入居者を早く見つけることにつなげられます

空室が1か月でも続けば、その間は家賃を受け取ることができないので、このメリットを目当てに空室対策としてフリーレントが選ばれることが多いです。

家賃を下げる必要がない

入居者が数年住んだ後、新しく入居者を募集する際には建物の築年数が進んでいたり、近隣に新しい賃貸物件ができていたりして、家賃を下げないと入居者を集められないことがあります。しかし、「家賃を下げる」空室対策をするのではなく、「フリーレント」で空室対策することで、これまでと同じ家賃で入居者を見つけられる可能性もあります

資産価値低下を回避できる

たとえば、フリーレントではなく家賃を70,000円から64,000円に減額したとしましょう。64,000円で入居者募集をしているのを見たまったく同じ間取りの部屋に住むほかの入居者から、「うちも家賃を下げてほしい」と交渉が入ることが想定されます。

実際に、ほかの部屋の家賃を下げてしまうと収益が下がることはもちろん、賃貸物件そのものの資産価値が大きく下がってしまうのです。フリーレントであれば資産価値の低下を回避しながら空室対策を行うことが可能になります。

入居者側のメリット

次に、入居者側のメリットについて解説していきます。

入居のための初期費用が抑えられる

入居者にとってのメリットの1つ目は入居のための初期費用が抑えられるということです。入居者が契約時に必ず支払う初期費用には前家賃のほか、敷金・礼金、仲介手数料や火災保険料などがあります。それ以外に荷物量や時期によって異なりますが、引越し費用として単身の場合で5~10万円かかることが一般的です。

フリーレントであれば前家賃分の費用を減らすことができるため、少しでも初期費用を抑えたい人にとっては魅力的な物件になるでしょう

スケジュールに余裕をもって引っ越しできる

2つ目はスケジュールに余裕をもって引っ越しできるということです。現在契約している物件を解約する場合は、1か月前に退去通知を行うのが一般的ですが、退去通知を行ってすぐに次の物件の契約に至ってしまうと、現在の物件と新しい物件の家賃の二重払いが生じます。

フリーレントであれば新しい物件を契約しても一定期間家賃を支払う必要がないため二重払いに気を揉むことがなく、スケジュールに余裕をもって引っ越すことができます

フリーレントにはデメリットもあるので注意が必要

一方、フリーレントは大家さんにとってデメリットもあるため注意が必要です。どのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。

収益悪化のリスクがある

フリーレントは単に家賃を受け取らないことなので、あまり多用してしまうと収益が下がり、経営悪化につながるリスクがあります。「年間の収益性にどのくらいの影響を与えるか」や「フリーレントにより何か月空室期間を短縮できたか」など指標を立て、実際に効果があったのかどうか検証していきながら、フリーレントの利用について検討していくとよいでしょう。

フリーレントは考え方次第では家賃を下げていることと同じ

たとえば、フリーレント1か月家賃7万円で1年間賃貸に出すことを考えると、以下のようになります。

フリーレント無 70,000円×12か月=840,000円
フリーレント有 70,000円×11か月=770,000円

上記を12か月で割ると、フリーレント有では1か月64,000円の賃料ということになり、家賃を64,000円に下げて貸し出したのと変わらない計算となっています。もちろん、1年以上賃貸に出せればその分だけフリーレントの効果は高まることになりますが、空室対策として家賃を下げるのがよいのか、フリーレントがよいのかについてはよく検討する必要があります

退去時にトラブルになるリスクがある

フリーレント設定時には、短期間での解約についてペナルティを設けるのが一般的である旨をお伝えしましたが、契約時にこのことをしっかり伝えておかないと退去時にトラブルとなることがあります。

入居時にフリーレントのペナルティについて伝えることがマイナスの印象を与える可能性はありますが、制度についてしっかり納得してもらった上で入居してもらうことが大切です(とはいえ、実際にこうしたことを行うのは不動産会社の営業マンです)。

フリーレント活用ケーススタディ

フリーレントはどのようなケースでとくに有効でしょうか。ここでは、ケーススタディを使ってフリーレントが効果的なケースを紹介します。

ケーススタディ1:空室が長期間続いているとき

空室が長期間続いている物件でフリーレントによる入居者勧誘を行ってみることは、損が少ないという意味で効果的です。とくに、2~3月以外の繁忙期で空室が生まれてしまったときや、4~5月を超えても入居者が決まらない物件でフリーレントの活用を考えてみるとよいでしょう。たとえば、家賃7万円の物件で空室期間が3か月になる場合、3か月×7万円=21万円分の損をしていることになります。

これ以上空室期間を伸ばさないために、何らかの対策をしなければなりませんが、フリーレントであれば何か費用を負担しなければならないわけでもなく始めやすいです。

それですぐに決まれば、最初に設定した1~2か月(7~14万円)の家賃が受け取れないことになりますが、仮に何も対策せずに空室期間が同じ期間続いていたとしたら同じことです。また、フリーレントで契約して短期での解約となってしまった場合には、フリーレントで免除した家賃分をペナルティとして受け取ることができます。

以上のように、空室期間が長く続いているときに行う空室対策としてのフリーレントは、出費がなくすぐ始められ、フリーレントで免除する家賃を「もし対策せずに様子見をしていた場合にさらに空室期間が伸びたもの」と考えれば損は少ない、という理由で効果的です

ケーススタディ2:新築物件の入居募集時

フリーレントを効果的に用いることで資産価値を高めることができるため、新築物件の入居募集時にはフリーレントが付けられることが多くあります。「フリーレントを付けることでお得感を出しつつ、一方で家賃を高めに設定することで損もしない」という戦略です。

たとえば、もともと家賃10万円、契約期間2年で入居募集しようと思っていた新築物件で、フリーレントを2か月分付けると以下のようになります。また、家賃を調整すれば年間で受け取れるお金も同程度にすることが可能です。

フリーレント無 100,000円×24か月=2,400,000円
フリーレント有(2か月) 100,000円×22か月=2,200,000円
フリーレント有(2か月) 109,000円×22か月=2,398,000円(※家賃調整)

もちろん、近隣物件の相場との比較は行うべきですが、新築物件ではまだ家賃が決められておらず、また比較的高い家賃でも入居者を集めやすいです。上記のようにすることで、フリーレントを付けることでお得感を与えつつ、得られる収入は同じにすることができます

しかも、最初に高い家賃で設定しておけば、次の入居者募集のときも(相場とかけ離れていない場合に限りますが)同額程度かやや下げる程度で入居者を集めることができるでしょう。

フリーレントは活用次第で効果的な空室対策に!

上記のように、フリーレントを活用することで経営的にも高い効果を得られる可能性があります。ただし、家賃収入=経営資源を免除するものでもあるので、家賃を下げたり、リフォームしたりといった、ほかの空室対策とも比較検討しながら活用していくのがよいでしょう。悩む場合は不動産会社に相談することをおすすめします。

よくある質問

ここでは、フリーレントに関するよくある質問をご紹介します。
フリーレントを採用する際に違約金を設定する理由は?
フリーレントを採用したものの、フリーレント期間後すぐに退去されてしまっては大家さんの負担が大きくなってしまいます。そのため、フリーレントでは契約書に期間内に解約した場合の違約金に関する定めを盛り込むのが一般的です。なお、トラブルを避けるためにも、契約締結の際、入居者に違約金について口頭で説明することをおすすめします。
詳しくはこちらの記事を参照ください。
フリーレントを採用する際に考慮すべきことは?
空室になってすぐにフリーレントを採用して契約が成立した場合、フリーレントなしでも契約が成立していた可能性があることを考えると、フリーレントの効果をあまり感じることができません。また、空室期間が長く続いているときにフリーレントを採用すると、家賃収入が得られない期間を長引かせてしまいます。空室期間やキャッシュフローなどを考慮しながらフリーレント採用のタイミングを検討しましょう。
フリーレントの会計処理はどうすればいい?
フリーレント期間の会計処理の方法は、「フリーレント期間中は計上しないパターン」と「賃料総額を賃貸期間で分割して計上するパターン」の2つに分類されます。一般的には前者の方法が用いられますが、その他の会計処理の方法として後者の方法も覚えておくと良いでしょう。なお、計上方法は税理士さんなど専門家の方に相談することをおすすめします。
詳しくはこちらの記事を参照ください。

まとめ

フリーレントについて、その概要や効果的な理由、メリット・デメリットやケーススタディなどお伝えしました。フリーレントは高い空室対策効果を得られる可能性がありますが、一方で、収益を削ってしまうという難しい側面を持ちます。

やみくもに用いるのではなく、フリーレントを活用することで何か月間空室期間が短縮したのかなどデータを取りながら、また、家賃を下げるなどほかの空室対策との比較検討をしながら、慎重に活用していくようにしましょう。

フリーレントを空室対策に効果的に活用するためにも、
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この記事の監修者

逆瀬川 勇造
逆瀬川 勇造

AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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