アパート建て替え前の立ち退き依頼、どのように進めればいい?

監修キムラ ミキ

  • 公開日:
  • 2019年06月08日
  • 更新日:
  • 2019年06月11日
アパート建て替え前の立ち退き依頼、どのように進めればいい?
アパート経営をしていると、建物の状況により建て替えを検討しなければならない時期は必ず生じます。建て替えを行うには、まず、入居者をゼロにしなければ工事を始めることができません。とはいえ、入居者にはどのタイミングで告知をし、どのように立ち退きをお願いすればいいのでしょうか。この記事では、アパートの建て替えに伴い入居者への立ち退き依頼を予定している大家さんに、立ち退きの流れや費用など、注意しておきたいことを含めてお伝えしていきます。

目次

立ち退きを検討している大家さんへ

建物が老朽化することにより入居率が低下するほか、安全面にも不安が生じることも考えられます。そのため、建物の老朽化に伴って、建て替えを検討する時期は必ず生じることになります。建て替えを行う際、入居者がいると工事を始めることができません。そのため、立ち退き(入居者との賃貸借契約の解約を申し入れて、退去してもらうこと)をお願いする必要があります。大家さんから入居者に立ち退きをお願いする際、法律に定められているルールに従う必要があります。

立ち退き業務を行うのは大家さん

立ち退きのルールを規定しているのは、借地借家法です。借地借家法第28条では、以下のように規定しています。

借地借家法 第28条
建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明け渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。


つまり、大家さんから入居者に賃貸借契約の解約をお願いして、実際に入居者に退去してもらうためには、正当な理由がなければ認められないということです。また、入居者に立ち退きをお願いする行為ができるのは、大家さんまたは弁護士です。弁護士法では、以下のように規定しています。

弁護士でない者は報酬を得る目的で法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。


要するに、この条文はトラブルに発展する可能性のある交渉ごとについては、弁護士以外の人が仕事として行うことができないということを示しています。

管理会社は立ち退き交渉ができない

賃貸借契約の解約を求める立ち退き交渉も、トラブルに発展する可能性のある行為です。そのため、立ち退き交渉は、「大家さん自らが行う」または「弁護士が代理して行う」しか選択肢はありません。管理会社に立ち退き交渉を依頼したり、管理会社がその依頼を受けたりするのは法律違反となるということは、大家さんとして知っておきたい知識です。

立ち退きは正当な理由が必要

また、借地借家法に「立ち退きには、正当な理由がなければ認められない」と規定されていることは先にも述べた通りです。正当な理由をもって行われるものであるか否かは、以下のような事情を総合的に考慮して判断されます。

建物の使用を必要とする事情
大家さんが、その建物しか住む場所がない等、その建物を使用することが必要であると判断される場合、その事情が考慮されます。
入居者が家賃滞納をしているなど、建物の賃貸借に関する従前の経過
再三督促をしても、家賃滞納が継続している等、建物の賃貸借契約に反する行為が認められる場合、その事情が考慮されます。
入居者の建物の利用状況
入居者が、大家さんに無断でリフォームをしたり、破壊行為を繰り返したり、等利用状況が望ましくない場合、その事情が考慮されます。
建物の現況
また建物が老朽化したため建て替えを行う等の場合、その事情が考慮されます。
大家さんが立ち退き料を入居者に支払うことを申し出たこと

立ち退きに伴う賃貸借契約の解約を申し入れに関わるものとしては、「建物の現況」「大家さんが立ち退き料を入居者に支払うことを申し出たこと」が該当します。

立ち退きの流れ

実際に、立ち退きを依頼し、入居者に退去してもらうには、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか。立ち退きまでの流れについて整理しておきたいと思います。

立ち退きの告知(書面)

まずは、入居者に対して立ち退きの告知を行う必要があります。賃貸借契約では、大家さんからの解約の申し入れは、原則として期間満了の6か月前までに行う必要があります。なお、期間の定めがない賃貸借契約においては、解約の申し入れから6か月が経過した時に、解約の効力が生じることになります。

立ち退きの通知書に記載すべき事項

立ち退きの通知書に記載すべき事項としては、立ち退きの時期のほか、立ち退きを求める正当な理由を盛り込む必要があります。また、立ち退き料の支払いを行う場合には、その内容についても記載が必要です。

立ち退きの口頭説明

書面で立ち退きの告知を通知した後、各入居者に口頭で立ち退きについての説明を行い、明け渡し日の予定を確認していきます。

立ち退き費用の交渉

立ち退きの書面告知、口頭説明では納得をしない入居者もいる可能性があります。その場合、立ち退き費用の交渉を行い、納得してもらう必要があります。なぜなら正当な理由があっても、大家さんからの賃貸借契約の解除申し入れは強制することはできないからです。立ち退き料に含まれるものには、以下のようなものが挙げられます。

引っ越し代

立ち退きを了承し、部屋を明け渡す場合、入居者は新居に引っ越しをする必要があります。引っ越しをするには、引っ越し業者へ支払う費用のほか、新居の契約費用も必要です。部屋の大きさや世帯状況にもよりますが、引っ越し業者へ支払う費用は、単身の方で3~4万円。また、新居の契約費用は家賃のおよそ5~6か月分、家賃が6万円であった場合、30万円程度かかることになります。

慰謝料

場合によっては、入居者から慰謝料を請求されることもあります。慰謝料の相場はケースバイケースであるため、特に目安はありませんが、数百万円を請求されたというケースもあるようです。慰謝料を求められるようなトラブルに発展してしまった場合には、弁護士に相談されることをおすすめします。

退去手続き

立ち退き料の交渉がまとまり、入居者から了承を得られたら、退去手続きに入ります。立ち退き料は、立ち退き完了後に支払うケースが多いですが、入居者によっては引っ越し費用の工面ができない場合もあります。その場合、引っ越しの前後2回に分けて支払うという方法をとることもあります。

立ち退きを依頼する際に注意しておきたいこと

立ち退きを請求されることは、入居者にとっては迷惑以外の何者でもありません。正当な理由があっての立ち退き請求であっても、大家さんが誠意をもって行うことは大切なことです。立ち退きを依頼する際に注意しておきたいことについてまとめておきたいと思います。

通知時期

通知時期は、先にも述べた通り、原則として賃貸借契約の期間満了の6か月前までに行う必要があります。なお期間の定めがない賃貸借契約においては、解約の申し入れから6か月が経過した時に、解約の効力が生じることになります。

通知書の記載事項

通知書に必要事項を箇条書きなどで無機質に記載するのではなく、今まで入居してもらったことへの感謝と、立ち退きを依頼したことについてのお詫びについても添え書きすることが必要です。大家さんからの一方的な立ち退き依頼と捉えられてしまうこと、入居者の感情はマイナスに働き、立ち退き依頼がスムーズに進まなくなってしまう可能性があります。

入居者の状況

入居者が高齢者である場合など、入居者の属性によっては、次の入居先を見つけることが難しい方もいます。入居先探しのサポートについても引き受けて、誠意を示すことは必要なことです。

まとめ

アパート経営を長期に渡り継続していくためには、将来、必ず建て替えを検討する時期が来ます。それに伴い、入居者に対する立ち退き依頼は、避けることはできません。とはいえ、そのアパートに長く住み続けようと考えていた善良な入居者にとっては、ある日突然立ち退きを請求されるとは青天の霹靂。だからこそ、大家さんは誠意をもって立ち退きを依頼にあたる必要があるのです。トラブルに発展することを避けるためにも、弁護士にも相談しながら慎重に進めていくことをおすすめします。
キムラ ミキ

監修キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。
大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。
大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。
その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

※紹介されている情報は、記事公開当時の内容です。法律改正等により内容に変更がある場合もございます。