震災に備えてリスクヘッジ!大家さんなら加入しておきたい地震保険

2024.07.17更新

この記事の監修者

震災に備えてリスクヘッジ!大家さんなら加入しておきたい地震保険

地震保険へ加入を検討している方へ、補償内容や保険料などの基本情報を中心に、特約についても説明しながらお伝えしていきます。

目次

大家さんなら加入しておきたい地震保険

近年は巨大地震が多発しており、地震活動が活発化しているといわれている現在では、日本中いつどこで地震が起きてもおかしくない状況です。

ひとたび巨大地震が起これば、火災、津波、土砂崩れ、液状化現象などの震災が起こる恐れや、長期にわたり強い余震が頻発する傾向もあり、建物の損壊・倒壊リスクは高いと考えられます。

損害保険料率算出機構の統計をみると、地震に備える意識が次第に高まってきていることがわかります。東日本大震災が起きた2011年には53.7%だった地震保険付帯率(火災保険の新規契約とともに地震保険に加入する割合)が、2022年には69.4%まで上昇しています。

収益不動産が地震の被害を受けると、復旧費用が高額になることや長期間家賃収入が得られなくなることも予想されるため、保険によっていかに金銭的な負担を軽減できるかが重要です。

地震保険への加入方法

地震保険は単独で加入することはできず、必ず火災保険とセットで加入します。火災保険の保険期間は最長10年、地震保険は最長5年のため、1年更新や5年更新などで火災保険の保険期間に合うように調整して契約します。

途中加入も可能

火災保険に新規に加入する際だけでなく、保険期間の途中でも地震保険に申し込むことができます。途中加入を希望する場合は、契約中の損害保険会社や契約をした代理店に「地震保険を追加したい」と連絡をすれば、手続きに必要な書類を用意してくれます。

地震保険の補償内容

地震保険の補償範囲は、火災保険ではカバーされない地震、噴火、津波を原因とする火災、損壊、埋没、流出などの損害です。地震保険は、政府と損害保険会社が共同で行っている事業のため、どの保険会社で契約しても補償内容は同じです。

地震保険の特約

地震保険に付加できる特約によって、補償範囲はそのままで補償額を増やすことができます。特約は、地震などによる火災のみに限って補償額を上乗せするタイプと、地震などによる火災・損壊・埋没・流失の補償額を上乗せするタイプの2種類があります。

建物の耐震性が高い場合や建物が高台にあり津波の心配がない場合などは、火災の補償のみ上乗せすることで特約保険料を抑えることもできます。

地震保険の保険料

保険料は、どの保険会社で加入しても同じです。建物の所在地(都道府県)や構造によって保険料は決められており、地震保険金額1000万円で保険期間1年の場合、鉄筋やコンクリート造などの建物(イ構造)は7,100〜25,000円、木造などの建物(ロ構造)は11,600〜38,900円と設定されています(2019年3月時点)。

特約を付けた場合の保険料

地震保険の特約は保険会社独自のサービスなので、補償内容や保険料にはバラつきがあり、所在地や構造によっても料金は変動します。なお、補償内容や保険料の詳細は、損保各社や代理店でご確認ください。

地震保険料の割引制度

地震保険は火災保険と同様に、2~5年の契約には長期割引が適用され、長期になるほど保険料が安くなります。また、確認資料を提出することにより、地震保険特有の割引制度も利用できます。4つある割引のうちいずれかひとつが適用となり、最大50%割引となります。

建築年割引

1981年6月1日以降に建てられた建物の場合に適用され、10%割引となります。

確認資料:建物登記簿謄本、建築確認書など

耐震等級割引

耐震等級とは、住宅の地震に耐えるための性能をランク付けしたものです。耐震等級割引は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」または「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に基づく耐震等級を有した建物の場合に適用されます。等級によって3段階の割引率が設定されており、等級3が最も高い割引率になります。

【割引率】
耐震等級3:50%
耐震等級2:30%
耐震等級1:10%

確認資料:建設住宅性能評価書、耐震性能評価書など

免震建築物割引

耐震が地震の揺れに耐える構造であるのに対し、免震は地震の揺れを受け流す構造です。免震装置を設置することで、建物に直接揺れを伝えないようにすることができます。免震建築物割引は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく免震建築物の場合に適用され、50%割引されます。

確認資料:建設住宅性能評価書、設計住宅性能評価書など

耐震診断割引

住宅の耐震性をチェックするのが耐震診断です。耐震基準は1981年と2000年に更新されており、以前の基準で設計された住宅は耐震性能が不足している可能性があります。耐震診断割引は耐震診断を受けて、「改正建築基準法」における耐震基準を満たす建物であった場合に適用され、10%割引されます。

確認資料:耐震基準適合証明書、住宅耐震改修証明書など

地震保険の補償額

地震保険の建物への補償額は、火災保険金額の30~50%、かつ、5,000万円が上限です。

たとえば、1憶円の火災保険を契約している場合は3,000~5,000万円の範囲で加入できますが、2億円の火災保険を契約している場合には、25%の5,000万円までしか加入できないということになります。

また、地震によって建物が被害にあっても、必ず満額が支払われるわけではありません。建物の被害の程度によって受け取れる保険金の額が変わります。

全損

以下のどちらかの損害基準に当てはまる場合、保険金額の100%(時価額が限度)が支払われます。
※時価額とは、同等の物を現時点で再築・再購入する場合の金額(再調達価額)から、経過年数や使用による消耗分を差し引いた金額のことです。

(a)主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上
(b)焼失もしくは流失した部分の床面積が、建物の延床面積の70%以上

大半損

以下のどちらかの損害基準に当てはまる場合、保険金額の60%(時価額の60%が限度)が支払われます。

(a)主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満
(b)焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満

小半損

以下のどちらかの損害基準に当てはまる場合、保険金額の30%(時価額の30%が限度)が支払われます。

(a)主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満
(b)焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満

一部損

以下のどちらかの損害基準に当てはまる場合、保険金額の5%(時価額の5%が限度)が支払われます。

(a)主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満
(b)建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない

特約で補償額の上乗せができる

地震保険はあくまでも「被災後の生活の立て直し」が目的で、「建物の再築」を目的とするものではありません。そのため、通常の補償額は火災保険金額の50%までで5,000万円が限度のため、保険金だけで収益不動産を再築するのは難しいでしょう。

そこで注目したいのが地震保険の特約です。地震保険と特約に加入することで、最大で火災保険金額の100%まで補償額を増やすことができます(火災保険金額の50%で地震保険に加入した場合)。

特約を扱う損害保険会社が増えてきている理由として、追加の保険料を払ってでも地震に対する備えを充実させたいという声が多く上がっていることがあげられます。補償額を100%にできれば、ローン返済中の建物が損壊し、再築するために新たなローンを組むという「二重ローン」を避けることができるので、加入しておきたい特約です。

しかし、巨大地震がおきれば甚大な被害が予想されるため、特約保険料は高めに設定されています。キャッシュフローを圧迫する一因ともなるため、保険料を考慮しながら特約を検討しましょう。

地震保険料は控除の対象?

所得控除制度には地震保険料控除があります。ここでは、収益不動産にかけた地震保険料が控除の対象となるかどうかを説明します。

大家さんは保険料控除ができない

地震保険料控除を受けるためには、契約者や生計をともにする配偶者や親族が常に住宅として使用していなければなりません。よって、大家さんが居住していない収益不動産の場合は保険料控除の対象外となります。

契約している損害保険会社から地震保険料控除証明書が届きますが、所得控除として処理をしても地震保険料控除を受けることはできないので注意が必要です。

地震保険料は経費として申告しましょう

地震保険料は不動産所得の必要経費とすることができます。賃貸併用住宅の場合には延床面積などで按分して、自宅部分は地震保険料控除、賃貸事業用部分は経費とします。また、2~5年の長期契約で一括払いをした場合は、毎年その年の分だけ経費計上していくことになります。

まとめ

震災被害をカバーできるのは地震保険だけです。地震によってアパートやマンションが被害に遭い、「莫大な借金だけが手元に残る」「家賃収入がなくなり生活が立ち行かなくなる」という最悪のシナリオを回避するためにも、地震保険での備えは不可欠でしょう。

とはいえ、地震保険料や特約保険料は、地域や建物の構造によっては高額になることもあります。補償の手厚さだけでなく保険料とのバランスを考えて、どの程度の補償をつけるべきか見極めることが大切です。

この記事の監修者

不動産住宅情報サイト「スマイティ」の編集部。不動産を所有している方に向けて、悩みや疑問を解決するための正しい知識や、大切な資産をより有効に活用するためのノウハウをお届けしています。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。