目次
大家さんにとっての火災保険
近年は地震や水害など、大規模な自然災害が多発しています。自然災害などにより経営する賃貸物件に全壊・半壊で機能しなくなれば、家賃収入を得られなくなり、借金だけが残るといった状況に陥る可能性もあります。賃貸経営をするにあたって大きな痛手となるリスクはたくさんありますが、そのリスクのひとつに備えるのが火災保険です。
契約内容は定期的な見直しが大切
火災保険に加入したら、それ以降は何もしなくてもずっと安心でしょうか。残念ながらそうとはいえません。長期間見直しをしないことは補償内容の不足を招き、事故が起こった際に十分に機能しない恐れもあります。
高い費用をかけて保険に入るのですから、無駄な保険にならないようにしたいですよね。月々のキャッシュフローに関わることでもあるので、定期的な見直しを徹底しましょう。
高い費用をかけて保険に入るのですから、無駄な保険にならないようにしたいですよね。月々のキャッシュフローに関わることでもあるので、定期的な見直しを徹底しましょう。
特約はプラスαで補償内容を充実させるもの
賃貸物件によって構造や設備、築年数、居住者の属性、立地など、多くの条件が異なります。そのため、発生しうるリスクにも違いがあるので、火災保険の基本的な補償だけでは不十分と感じる場合もあるでしょう。
そこで、補償を充実させることによって、ニーズに合った保険にカスタマイズできるのが、「特約」という存在なのです。
そこで、補償を充実させることによって、ニーズに合った保険にカスタマイズできるのが、「特約」という存在なのです。
火災保険の主な特約とは
火災保険の特約には、「自動セット特約」と「オプション特約」という2つの種類があります。それぞれの特徴を確認しておきましょう。
自動セット特約
火災保険にあらかじめセットされている特約です。自動セット特約は主契約である火災保険に必ずセットされ、削除できないのが基本ですが、セットするかしないかを選択できる場合もあります。契約内容や保険会社ごとに対応が異なるので、必ず確認するようにしましょう。
オプション特約
必要に応じて追加できる特約です。オプション特約の種類は多く、保険会社によっても用意されている特約は異なります。起こりうるリスクに備えるために、できるだけたくさんの特約に入っておこうと考える人もいるかもしれませんが、多ければ多いほどよいというわけではありません。
オプション特約を追加するごとに支払う保険料は高くなっていくので、キャッシュフローのバランスを考えながら、本当に必要かどうかを見極める必要があります。
オプション特約を追加するごとに支払う保険料は高くなっていくので、キャッシュフローのバランスを考えながら、本当に必要かどうかを見極める必要があります。
特約は一般的に単独で加入はできない
特約は火災保険に追加する形で加入することとなります。単独では加入できず、契約期間の途中では付加や削除ができない場合もあるので、慎重に検討しましょう。
主な特約をご紹介
賃貸経営には、個人宅と異なりさまざまなリスクがあります。ここでは、大家さんが加入することの多い特約をいくつかご紹介します。
※以下では、賃貸オーナー向け火災保険に付帯可能な特約の一般的な補償内容(概要)について記載しています。特約の名称や補償内容は、各保険会社によって異なりますので、詳細については、パンフレット、約款等でご確認ください。
※以下では、賃貸オーナー向け火災保険に付帯可能な特約の一般的な補償内容(概要)について記載しています。特約の名称や補償内容は、各保険会社によって異なりますので、詳細については、パンフレット、約款等でご確認ください。
施設賠償責任特約
保有する賃貸物件の欠陥や、賃貸・管理業務とこれに付随する業務の遂行を原因とする偶然な事故により、他人にけがをさせたり他人の物を壊したりするなど、法律上の損害賠償責任を負った場合の損害(賠償費用)を補償します。
施設賠償責任については以下の記事でも詳しく説明しています。
家主費用特約
賃貸住宅内で死亡事故が発生したことによる空室期間や値引期間の家賃損失、清掃や脱臭などの原状回復費用、遺品整理などにかかる費用を補償します。
内閣府の発表によると、一人暮らしをしている65歳以上の高齢者数は年々増加しており、さらに、高齢者の孤独死は年間6.8万人と推計されています。長期経営を考えているオーナーは加入を検討したい特約です。
内閣府の発表によると、一人暮らしをしている65歳以上の高齢者数は年々増加しており、さらに、高齢者の孤独死は年間6.8万人と推計されています。長期経営を考えているオーナーは加入を検討したい特約です。
家賃収入特約
火災などの事故の発生により受ける家賃の損失を補償する特約です。火災保険に入っていれば、事故が起きても建物や家財は補償されますが、修理や建替によって部屋を貸し出せない期間の家賃収入は補償されていません。
3ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間といったように契約時に補償する期間を設定し、その期間を上限として損失した家賃分の保険金が支払われます。
3ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間といったように契約時に補償する期間を設定し、その期間を上限として損失した家賃分の保険金が支払われます。
事故再発防止等費用特約
火災、落雷、破裂・爆発、盗難の事故による損害が発生し損害保険金が支払われる場合に、事故の再発防止策として、事故再発防止メニューが利用できます。
<対策例>
・盗難事故の再発防止のため、防犯カギを設置した
・火災事故の再発防止のため、ガス台自動消火器を設置した
<対策例>
・盗難事故の再発防止のため、防犯カギを設置した
・火災事故の再発防止のため、ガス台自動消火器を設置した
IoT住宅費用「売電収入・サイバーリスク」特約
太陽光発電システムやIoT家電・住宅設備を導入したスマートハウス向けの特約です。太陽光発電システムが事故で損害を受けたことによる売電収入の損失を補償する「売電収入補償」と、IoT家電・設備がサイバー攻撃を受けることで発生した費用を補償する「サイバーリスク費用補償」からなります。
居住用建物電気的・機械的事故特約
建物に付属する空調設備、給湯設備、昇降設備、照明設備、駐車機械設備などに電気的・機械的な事故(ショート、アーク、スパーク過電流など)が生じ、故障した場合の修理費用を補償します。自然の消耗や劣化などによる事故は保険の対象外となる場合があります。
マンション居住者包括賠償特約
共同住宅のすべての居住者を対象に、漏水や日常生活における賠償事故を包括的に補償します。示談交渉サービスも利用可能です。損害防止費用、権利保全行使費用、緊急措置費用、示談交渉費用、訴訟費用といった実際に負担した費用が支払われる商品もあります。
建物水災支払限度額特約
水災事故の際の損害保険金を建物保険金額の30%、もしくは10%を限度とする特約です。たとえば、防災マップなどで物件がある地域の洪水・内水・土砂崩れなどの危険性を確認し、水災リスクが低いと判断できる場合には、保険金の支払限度額を下げることで保険料を抑えることができます。保険の対象が共同住宅建物の一棟全体の場合に付加できます。
類焼損害特約
自分の所有する住宅での火災、破裂または爆発により、近隣の建物や収容されている家財に類焼した場合、法律上の損害賠償責任がなくてもその損害を補償します。
2017年の内閣府防災担当の発表 によると、火災保険の加入率は80%を超えていますが、未加入の世帯や保険の見直しをしていないことにより補償が不十分な世帯もあるでしょう。このような、類焼先で不足する復旧費用をカバーします。
2017年の内閣府防災担当の発表 によると、火災保険の加入率は80%を超えていますが、未加入の世帯や保険の見直しをしていないことにより補償が不十分な世帯もあるでしょう。このような、類焼先で不足する復旧費用をカバーします。
建替費用補償特約
火災や水災などの火災保険で保険金が支払われる事故によって、建物が協定再調達価額の70%以上100%未満の損害を受け、同一用途の建物に建て替える場合の建替費用や、建替に伴う取り壊し費用を補償します。
防犯対策費用補償特約
建物内で不法侵入の形跡が明らかな犯罪行為が発生し、再発防止策として建物の改造を行った場合の費用を補償します。
<対象となる改造>
・扉や窓の錠の取り替え、補強
・窓用防犯シャッターや同様の装置の設置
・侵入者探知センサー、ブザーや同様の防犯装置の設置
<対象となる改造>
・扉や窓の錠の取り替え、補強
・窓用防犯シャッターや同様の装置の設置
・侵入者探知センサー、ブザーや同様の防犯装置の設置
地震保険への加入は必ず検討しましょう
地震保険は火災保険の特約にはなく、別途、加入が必要です。地震保険は、国と各損害保険会社が共同で運営している制度で、火災保険では補償されない地震による火災や津波などの損害を補償してくれます。万一に備え、ぜひ加入を検討しましょう。
特約の要否を見極めるポイント
無駄なく特約を付加するには、まずはリスクを把握することが必要です。どのようなリスクがあるか、そのリスクの損害はどの程度になるのかを推測し、自己資金で対応するのは厳しいと判断できるケースを中心に、特約で補償を追加するとよいでしょう。
また、補償内容を理解しないで特約をつけてしまうと、「保険金を請求したら補償の対象外だった」といった結果になることもあります。どのような場合に保険金が支払われるのかだけでなく、保険金が支払われないケースについても確認した上で、特約の要否を決定しましょう。
特約の見直しをするのは、保険料の節約が目的というオーナーも多いと思います。しかし、節約ばかりに目を向けて特約を削ってしまうと、事故があった際に賃貸経営を危うくしてしまう可能性があり、注意が必要です。賃貸オーナーは、「いかに安心して賃貸経営ができるか」を念頭に、火災保険選びや見直しを行うことが大切です。
また、補償内容を理解しないで特約をつけてしまうと、「保険金を請求したら補償の対象外だった」といった結果になることもあります。どのような場合に保険金が支払われるのかだけでなく、保険金が支払われないケースについても確認した上で、特約の要否を決定しましょう。
特約の見直しをするのは、保険料の節約が目的というオーナーも多いと思います。しかし、節約ばかりに目を向けて特約を削ってしまうと、事故があった際に賃貸経営を危うくしてしまう可能性があり、注意が必要です。賃貸オーナーは、「いかに安心して賃貸経営ができるか」を念頭に、火災保険選びや見直しを行うことが大切です。
まとめ
火災保険の特約はどのようなものか、おわかりいただけたでしょうか。さまざまな特約があるため、どれを付加すればいいか判断に迷うこともあるかと思いますが、リスクを把握し、補償内容を理解することで、必要な特約を見極めることができます。
賃貸物件には入居者がいるので、事故があった際には迅速に復旧や対策を講じなければなりません。一棟所有の場合には損害額や対策費用が大きくなる可能性も高いので、特約で補償を充実させ、定期的な保険の見直しを忘れないようにしましょう。
火災保険は賃貸経営にとって欠かせないお守りです。火災保険とその特約をうまく活用し、安定・安心の賃貸経営を実現してください。
賃貸物件には入居者がいるので、事故があった際には迅速に復旧や対策を講じなければなりません。一棟所有の場合には損害額や対策費用が大きくなる可能性も高いので、特約で補償を充実させ、定期的な保険の見直しを忘れないようにしましょう。
火災保険は賃貸経営にとって欠かせないお守りです。火災保険とその特約をうまく活用し、安定・安心の賃貸経営を実現してください。
この記事の監修者
不動産住宅情報サイト「スマイティ」の編集部。不動産を所有している方に向けて、悩みや疑問を解決するための正しい知識や、大切な資産をより有効に活用するためのノウハウをお届けしています。