【大家さん必読】鉄部塗装は5年ごと!放置するリスクとメンテナンスの注意点

2024.09.09更新

この記事の監修者

弘中 純一
弘中 純一

宅地建物取引士/一級建築士

【大家さん必読】鉄部塗装は5年ごと!放置するリスクとメンテナンスの注意点

アパートを長く保つためのメンテナンスですが「鉄部」については目立たず関心の低い傾向があります。塗装の重要性や塗装方法を解説します。

アパートの安全性のために
大規模修繕の前に鉄部塗装を5年目安で考えましょう。

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※ページ下部の「賃貸経営一括相談および土地活用プラン一括請求サービスの注意点」をご確認いただいたうえ、ご利用ください。

目次

賃貸経営をするうえで鉄部塗装は安全維持に不可欠

アパートなどの賃貸経営を行うにあたり、建物の維持管理は非常に重要です。そのため計画的に「大規模修繕工事」を実施する大家さんは多く、外部塗装の周期はおよそ10~15年で行っていると考えられています。

外部塗装の部位は屋根および外壁になりますが、外部には一般的に「鉄部」と呼ばれる部位があります。鉄部に関してのメンテナンス周期については、外部塗装の周期と合わせるケースが多いですが、実は10~15年ではなくもっと短くする必要があるのです。

鉄部塗装の耐久年数は約5年!

「鉄部」とは外部階段やバルコニーなどの手摺や床下地で外部に露出している部分を言います。バルコニー手摺などはアルミ製の場合もありますが、特に外部階段は鉄骨製のものが多くなっています。

数年前にはアパートの共用階段が崩落し、居住者が亡くなる痛ましい事故もありました。鉄部は適切にメンテナンスを行っていないと錆が発生します。錆を放置しておくと鉄部が腐朽し大変危険な状態になってしまうものです。

一般的に鉄部は塗装仕上げになっており、その塗膜は5年ほどで劣化がはじまります。鉄部の耐久性を維持するためには、5年おきに塗装を行うことが望ましいと言われます。

鉄部の塗装部分に劣化が進むと生じるリスク

鉄製の建築部材は強度が高く耐久性も高いため、住宅の構造部材にも使用されます。大手ハウスメーカーの住宅には、軽量鉄骨造による工法を採用した商品も多く知られています。しかし、丈夫な素材「鉄」には「酸化」しやすいという欠点があります。

錆による機能の低下

鉄が酸化すると「錆」が発生します。錆は、大気中に含まれる「酸素」と「水分」によって発生するため、建物外部に使われている鉄製の部材は常に錆びる危険性があるのです。

錆の種類は「赤錆」で素材の腐食を進行させる働きがあり、鉄が持つ本来の性能や強度が失われてしまいます。いったん腐食が生じた鉄は元に戻ることはなく、朽ち果てるのを待つしかありません。

ほかの鉄部への伝染

鉄製の部材が一部でも腐食すると、周辺のまだ健全な部分にも錆が発生する場合があります。錆びた鉄部の表面にある「酸化鉄」は雨にさらされると流れ出します。流れ出た酸化鉄は周辺の鉄部に付着するため、健全だった部分まで腐食してしまうのです。

また、酸化鉄を含んだ雨水は鉄以外の部材にも付着するので、外壁などの表面にも錆による汚れが付いてしまいます。錆汚れは簡単に落とすことが難しく、汚れを隠すために塗装が必要になるため、予定外の出費を強いられてしまいます。

空室リスクにつながる

外壁が汚れておりメンテナンスがきちんと行われていないアパートは、部屋探しをしている方にとっては敬遠したくなる物件です。

鉄部の錆が目立つ物件や、階段やバルコニーが錆びており崩落の危険性まで予見させる物件は、案内をする仲介不動産会社の担当者にとっても「紹介できない物件リスト」に記載される可能性があります。

つまり鉄部の錆は「入居率の低下」を招くリスクの大きい現象と認識する必要があるでしょう。

アパートなどの賃貸用建物は、室内はもちろんですが外部の美観も重要です。駐車場、アプローチ、建物周囲、そして建物外観と、部屋探しをする段階で外部についての評価をしているケースは少なくないと思います。 内見では、外部の印象がよいと室内に入ってからの評価も高くなり、外部の印象が悪いと室内に対する評価が下がるといった可能性もあるでしょう。 階段の「手摺の錆」が全体の印象を悪くするかもしれません。

弘中 純一
弘中 純一

劣化サインレベルは5段階

鉄部の塗装は5年周期が望ましいと述べましたが、5年経過するまでは放置してよいといった意味ではなく、劣化状態を定期的に点検し再塗装のタイミングを適切に図ることが重要です。劣化状態は次の5つのレベルで判断します。

【劣化レベル1】艶がなくなる

塗装から数年経過すると鉄部表面の塗膜から艶が失われます。艶がなくなるのは塗膜表面に目に見えないほどの凹凸が生じ、光の反射が均一にならないためです。

凹凸は紫外線による塗膜表面の組織破壊によって起こる現象であり、劣化がはじまる初期症状と認識しておきましょう。

【劣化レベル2】色褪せが目立つ

塗膜表面に凹凸が生じるとその後は塗膜内部にまで劣化が進行し「色褪せ」が生じます。色褪せは顔料の結合が紫外線により切断されるためです。色褪せが生じ始めると塗り替えの時期が近いと判断してもよいでしょう。

なぜなら、放置するとますます塗膜の劣化が進んでいきます。

【劣化レベル3】チョーキング現象が起こる

塗膜の劣化が進み顔料の結合が切断され離脱すると、表面に白い粉末状の物質が現れます。手のひらで外壁表面をこすると白い粉が付着する「チョーキング」という現象です。

チョーキングが生じるようになると塗膜は劣化し防水性も期待できず、その上に重ねて塗装することもできません。外壁を洗浄したうえで塗装する必要があります。

チョーキングが見られるようになったら、再塗装のタイミングと認識しなければなりません。

【劣化レベル4】ひび割れが目立つ

塗装面にひび割れが生じるのは、塗装をした鉄部の膨張や収縮による力に耐えられず、塗膜に亀裂が入ることが原因です。また、以前塗装した時の施工不良による場合もありますが、塗膜のひび割れを放置すると剥がれが生じる原因ともなり、鉄部の腐食に進んでしまうので早急にメンテナンスを行う必要があります。

ひび割れはそのままにできないので、念入りな清浄な被塗面をつくる作業のケレンをしたうえでの塗装を行います。

【劣化レベル5】錆や剥がれが目立ちほかへの伝染

錆や剥がれが目立つ状態になると劣化レベルMAXと言ってよいでしょう。錆はまだ健全な部分にまで伝染します。鉄部の腐食が進み大きな力を受ける部位は危険な状態となります。腐食の状態によっては再塗装によるメンテナンスでは不十分であり、部材の交換が必要になる可能性もあります。

外部塗装などのメンテナンスは「建物管理」の一部であり、大家さんが管理会社に業務委託している場合は、管理会社が日常業務の中で点検を行うのが望ましいです。 しかし、外壁や屋根と異なり「鉄部」のように部分的なメンテナンスについては、管理会社の認識が低い可能性もあります。建物管理に関する日常業務について大家さんの考え方をまとめ、管理会社との間で意識を共有しておく必要があるでしょう。

弘中 純一
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パーツ部分で異なる単価と塗装手順

鉄部にはいろいろな部位があり、位置や形状によって足場が必要な場合があります。5年サイクルの塗装が難しい場合もありますが、大規模修繕工事の計画に加えて定期的な点検やメンテナンスを行うことが大切です。「鉄部塗装」として代表的な部位について、目安としての工事費用や塗装手順などを紹介します。

【破風(はふ)・鼻隠し】

破風は屋根の側面に、鼻隠しは軒先に取り付けた部材で、一般的には金属(トタン)製になっています。塗装工事は足場がなければできず、外壁・屋根塗装の時に行うことが多いです。

目立つ錆や剥がれがなければ洗浄により古くなった塗料の汚れを落としたうえで塗装しますが、錆などがある場合はケレンしたうえで塗装をします。

外壁・屋根塗装と同時に施工する場合の単価は、mあたり1,500~2,000円が目安です。

【雨戸・戸袋】

雨戸や雨戸を収納する戸袋は金属製(塩ビ鋼板製)が多く、定期的なメンテナンスを行わないと錆が発生し耐久性が失われます。塗装の手順としては、まず雨戸や戸袋表面をサンドペーパーなどで磨き、汚れや錆をきれいに落としたうえで塗装を行います。

塗装単価はm2あたり1,000~1,500円が目安ですが、一般的な窓の場合(引き違い窓、幅1.7m×高さ1.2m)雨戸も含めて5,000円程度になります。ただし2階の窓の場合は別途足場代などが必要になります。

【外部階段】

外部階段はアパートの居住者や来客者など不特定多数に利用される機会も多く、耐久性を維持し常に安全な状態を保つ必要があります。塗装する階段の場所が駐車場に面していることも多く、塗料や洗浄時の汚れが飛散しないよう養生するところから始まります。

錆や塗膜のひび割れなどもあるので、ケレンと高圧洗浄を行います。そのうえで錆止め塗装を行い中塗り、上塗りを行います。費用は一般的なアパートの外部階段であれば10~20万円が目安です。外壁塗装時に同時に行う場合は足場がありますが、外部階段単独の塗装では足場が必要になることが多く、10万円前後の別途費用を用意する必要があるでしょう。

【シャッター】

車庫や店舗入り口のシャッターや窓にシャッターが設置されている場合もあります。塗膜面が劣化してくると稼働性が悪くなり、耐久性も低下するので定期的メンテナンスが欠かせません。塗装工程は表面をサンドペーパーで磨き汚れを落として塗装を行います。下塗り、中塗り、上塗りと3回塗りが標準です。

工事単価はシャッターの溝があるため平面の塗装より高くなり、m2あたり2,000円が目安となります。

【ベランダ・バルコニーの手摺】

ベランダやバルコニーの手摺は鋼材やアルミが多く、アルミ建材であっても錆が生じるので塗装によるメンテナンスが望ましいです。また手摺は手に触れる頻度が高く塗装が剥がれやすいので、鋼材の手摺の場合は5年ごとに行うことが必要です。

塗装工程はサンドペーパーなどによるケレン、養生、下塗り、中塗り、上塗りですが、塗装業者によっては下塗り、上塗りの2回塗りをすすめる場合もあります。

塗装単価はmあたり1,000~2,000円が目安です。

【玄関ドア】

アパートのドアはアルミ製が多いです。アルミ製建材は塗装してもすぐ剥がれるため、メンテナンスとしての塗装は向かないとこれまで言われていましたが、現在はアルミ建材にも向く塗料が製品化されており塗装可能です。

アルミ製ドアには高級感のある艶が必要なため、塗装は吹き付けで行います。

工程は下地処理、下塗り、中塗り、上塗りが通常の手順になりますが、吹き付けのため養生を入念に行います。費用は高度な技能が必要であり1枚10万円前後となります。

【水切り】

外壁の下端に取り付けられた水平な部材を「水切り」と言います。外壁を伝わってきた雨水が土台内部に侵入することを防ぐための部材です。

アルミ製や塩ビ鋼板製が多く樹脂製の水切りもあります。通常は外壁塗装の時に一緒に施工することが多いですが、足場の必要がないため劣化が目立つようになったらその都度メンテナンスすることが可能です。

塗装手順としては、錆止め、下塗り、上塗りが通常で、費用はmあたり800~1,000円程度になります。

鉄部の塗装工事を行う際の注意点

鉄部塗装を行う時の注意点についてお伝えします。施工を行う塗装業者に頼る部分は多いですが、大家さんとしても関心を持っておくことが、より適切なメンテナンスを行う結果となります。

まずは鉄部の点検を行う

塗装工事を行うにはまず鉄部の点検を行い、塗装が必要な部分とまだ必要ではない部分を確認しなければなりません。大家さんみずから点検するのもよいですし、管理会社に依頼するのもよいでしょう。

そして最終的には塗装業者の判断になりますが、自主的な点検の結果塗装が必要と判断した時点で、塗装業者に見積もりを依頼します。以前に塗装を依頼したことのある業者がいるのであれば、同じ業者に依頼するのもよいですが、念のために「相見積もり」を別の業者から取り比較するのもよいでしょう。

工事前にあいさつを行う

見積書の提出を受け工事内容や金額について確認し、問題がなければ工事契約を締結し工事期間を決定します。着工前には塗装業者が近隣へのあいさつをしますが、大家さんも業者に同行してあいさつするか、業者とは別にあいさつしてもよいでしょう。

近隣へのあいさつは工事期間中に掛ける迷惑について、事前にアナウンスをする意味がありますが、工事を機会に近隣とのコミュニケーションを図る意味もあります。アパート経営は入居者が事業の相手になりますが、入居者が近隣に対して迷惑を与える場合もあり、近隣とのトラブルは経営者の立場としては避けたいものです。

近隣とのコミュニケーションはそのようなトラブルによる弊害を、わずかでも軽減させる効果も期待できます。

臭い対策をする

鉄部塗装は溶剤系塗料を使用することが多く、臭いが発生し近隣へ迷惑を掛ける場合があります。また、入居者への影響はもっと大きなものになります。

臭いがもっとも強い工程の時期を入居者が外出しているタイミングを合わせるなどの方法や、性能上問題がなければ臭いの少ない水性塗料を選択する方法もあります。

施工する塗装業者とも相談し、できるだけ納得のいく結果になるよう心がけましょう。

まとめ

「鉄部塗装」に焦点を絞りアパートなど賃貸物件のメンテナンスについて、その重要性や点検の仕方とメンテナンスの方法について解説しました。

鉄部は目立ちにくい部位ですが、劣化がはじまると建物全体の耐久性に影響する部位です。劣化のレベルは5段階あり、できるだけ初期の時点でメンテナンスを計画することが重要です。

塗装工事の費用や手順は目安であり、塗装業者に見積もりを依頼する時の参考にしてください。また塗装業者の選択にあたっては「注意点」で取り上げた事項について、塗装業者と共有することも課題となります。信頼できる塗装業者の力も借りながら、大切なアパートを長く保つことが安定した賃貸経営をつづける秘訣です。

アパートの安全性のために
大規模修繕の前に鉄部塗装を5年目安で考えましょう。

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弘中 純一
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宅地建物取引士/一級建築士

宅建取引士・一級建築士として住宅の仕事に関り30年。住宅の設計から新築工事・リフォームそして売買まで、あらゆる分野での経験を活かし、現在は住まいのコンサルタントとして活動中。さまざまな情報が多い不動産業界で正しい情報発信に努めている。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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