入居者から「なんだか洗濯機周りから臭いがする」といったクレームを受けたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。洗濯機付近からの嫌な臭いは、もしかしたら排水トラップが原因となっている可能性があるかもしれません。所有物件に臭いの問題があると退去されるなどのトラブルに発展することもあるため、大家さんは原因やその際の対応などを知っておく必要があります。今回は臭いの原因の1つである、排水トラップの役割や種類・設置方法などをご紹介します。
洗濯機置き場から異臭が!その原因は…
「洗濯機の周りから下水のような悪臭がする」そんなトラブルがある場合、排水トラップが原因となっている可能性があります。排水トラップは、洗濯物からの糸くずや髪の毛などの汚れが溜まりやすく、汚れが蓄積することでその役割を果たせなくなってしまうことがあります。また、古い物件であれば排水トラップ自体が設置されていない可能性もあるのです。そのような排水トラップの不具合は、下水からの悪臭が室内に上がってきてしまう原因となります。
異臭がある場合、空き物件であれば内見の際に悪い印象を残してしまうでしょう。また、異臭問題は入居者から苦情がくる大きな要因ともなります。洗濯機からの悪臭は洗濯物への臭い移りや、室内にまで悪臭が漂うことにつながり、ストレスとなる可能性もあります。
洗濯機はとくに使用頻度が高いため、異臭への対応が的確にできなければ、ストレスを感じた入居者が退去してしまう事態につながってしまう可能性もあるのです。そのような事態を防ぐためにも、異臭の原因となる排水トラップについて理解し、的確に対応できるようにするとよいでしょう。
排水トラップとは?役割と重要性
そもそも排水トラップとはどんなものなのでしょうか。排水トラップとは、洗濯機の排水口についているL字の筒型パイプのことをいいます。一般的に洗濯パンや床の端の設置されており、洗濯機の排水ホースと排水管を繋いでいるのです。この排水トラップの大きな役割が「下水からの臭いを遮断する」ことです。排水管は下水道とつながっているため、何もなければ下水の臭いがそのまま室内に入ってきてしまいます。それを防ぐ役割を担うのが排水トラップなのです。
排水トラップは、パイプの内部に水を溜められる仕組みになっています。この水のことを「封水」と呼び、排水経路に封水があることで空気の流れを遮断でき、下水の臭いが上がることを防いでいるのです。この封水がなくなることを「破封」といい、水の栓がなくなってしまうことで悪臭の原因となります。
排水トラップの種類
排水トラップは洗濯機だけでなく、洗面台やキッチンなど水回りの排水配管には基本的に使用されているものです。その種類は大きく分けて「サイホン型トラップ」「非サイホン型トラップ」の2つがあります。
サイホン型トラップ
サイホン型トラップは、さらに「Sトラップ」「Pトラップ」「Uトラップ」に分かれます。S字型をしているSトラップは、床下に排水する仕組みでコンパクトなため、アパートやマンションでよく見かけるタイプです。スペースは小さくて済みますが、汚れが溜まりやすく破封しやすいというデメリットがあります。
壁側に排水する仕組みのPトラップは、封水が安定しやすく、見た目もスッキリ見せられるため近年人気があるタイプです。Uトラップは水の入口と出口が水平なため、水の流れのトラブルにつながる可能性があります。
非サイホン型トラップ
非サイホン型トラップにはさらに、「椀トラップ」「ドラムトラップ」に分かれます。お椀を被せたような見た目の椀トラップは、キッチンやシンクでよく採用されているものです。古い物件では鉄製のものもありますが、今はほとんどがプラスチック製となり、お手入れがしやすいというメリットがあります。ドラムトップは、小さなタンクのような作りをしているため、より多くの水を蓄えることができ、封水が破られにくいという特徴があるのです。
排水トラップがないと起こるトラブル
排水トラップが機能しなくなると、臭いが発生したり害虫トラブルを引き起こしたりします。排水トラップには次の2つの大きな役割があります。
内部に水を溜め、空気の通り道を遮断することにより、
下水管から臭いが上がってくることを防いでいます。また、遮断しているのは臭いだけではありません。下水管にはネズミやハエ・ゴキブリなどの害獣・害虫が多く生息しています。
それらが下水管から室内に侵入するのを防ぐ役割もしているのです。そのため、排水トラップの不具合や排水トラップ自体がないことによって、下水管との遮断ができなくなり、臭いや害虫がそのまま上がってきてしまうのです。
排水設備は定期的にメンテナンスが必要
排水トラップを含めた排水管や浄化槽などの排水設備は、トラブルが生じると異臭や水漏れなどの大きな問題に発展するものです。また、排水設備のトラブルは対応が大規模になることもあり、トラブルが起きてからの対応では費用も手間もかかり大変になるでしょう。定期的にメンテナンスすることにより、トラブルを回避する必要があるのです。
異臭の原因は洗濯機の排水口だけじゃない?
異臭問題は洗濯機に排水トラップを設置しているから安心というものではありません。洗濯機であれば、洗濯槽の汚れや糸くずフィルター、ネットの汚れも原因となります。また、洗濯機だけでなく洗面所やキッチンの排水口も下水道につながっているため、洗濯機以外の排水口にも注意が必要でしょう。排水ホースであれば根元にある防臭キャップの劣化が原因となる場合もあります。排水トラップを含め、それらの排水設備もしっかり点検し、異臭問題を防げるようにするとよいでしょう。
排水トラップの取り付け方法
排水トラップが設置されていない場合、自分でも取り付けることが可能です。大まかな取り付け方法は次のとおりです。
・排水トラップの枠と排水管の内側に塩ビ用接着剤を塗布する |
・排水トラップのツバ裏に水漏れ防止のためのシリコンコーキング剤を塗布する |
・排水トラップをきっちり排水管に押し込む |
・付属のネジで固定する |
・付属のワンや化粧カバーなどのパーツを設置する |
・洗濯機の排水ホースを接続する |
排水トラップと接着剤などはホームセンターなどで購入できます。設置されている排水管のサイズを測って、サイズに合ったものを選ぶようにしましょう。
DIYが難しい場合はリフォーム会社に依頼しよう
排水トラップは、手順に沿って設置することで自分でも簡単に設置できます。しかし、設置にミスがあると異臭だけでなく水漏れなどのトラブルが起こってしまうため、ある程度の経験や知識が必要でもあります。自分で設置することが難しい場合は、リフォーム会社に依頼して設置してもらいましょう。
排水トラップについては共有部分となるため、原則としてその費用は大家さんの負担となります。リフォーム会社にもよりますが、5,000~20,000円が相場となり、設置工事も30分ほどで取り付けできます。しかし、リフォーム会社によって金額の差や対応が異なるものです。依頼する際には、複数のリフォーム会社に見積もりを依頼し、信頼できるリフォーム会社を選びましょう。
まとめ
排水トラップの役割や取り付け方法などについてお伝えしました。下水道からの臭いを遮断する排水トラップは、設置されていない場合や汚れ、つまりなどの不具合があると、室内に下水臭を上げる原因となります。排水設備は生活するうえでは欠かせないものであり、異臭や水漏れといったトラブルに発展すると入居者の生活に支障が出てしまうものです。排水トラップなど排水設備について理解し、的確に対応できるようにしましょう。
監修逆瀬川 勇造
【資格】AFP(2級FP技能士)/宅地建物取引士/相続管理士
明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。
大学在学中に2級FP技能士資格を取得。
大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。
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