サブスクとは
サブスクとは「サブスクリプション」の略で、古くからあるビジネスモデルの1つです。近年、ライフスタイルの多様化により注目を集め、さまざまな分野へとサービスが広がっています。
サブスクについて、くわしく説明していきます。
時代は「所有」から「利用」へ
サブスクはモノを買うのではなく、一定の料金を支払うことでサービスを利用できる仕組みのことです。代表的なものとして、定額制の音楽・動画配信サービス、電子書籍の読み放題サービス、フィットネスクラブなどがあります。
サブスクが普及した背景には、ITの普及による消費のデジタル化があります。ITに慣れ親しんだ世代にとっては、デジタルサービスの利用はごく身近な日常であり、モノを持たない暮らしが加速するのもごく自然な流れだといえます。高齢者のみの世帯が増加している現代において、「持たない暮らし」は今後ますます必要性を帯びてくるのではないでしょうか。
サブスクとレンタルの違いは
サブスクと混同しやすいビジネスモデルに、レンタルがあります。サブスクが定額料金を支払うことで一定期間「サービス」を利用するのに対し、レンタルは料金を支払って「モノ」を借ります。つまり、レンタルとサブスクには、一時的に「モノ」を借りるか、一定期間「サービス」を受けるかという、明確な違いがあるのです。
一方、サブスクとシェアはモノを共有するという意味でよく似ていますが、既存のモノを共有するシェアに対し、サブスクには食品やコスメなど消費するタイプのサービスもあるという点で、異なります。
不動産分野にも拡大、定額制オフィスから定額制住宅へ
前章でもお伝えしたように、サブスク型サービスは、配信サービスやクラウドサービスのようなデジタルコンテンツだけにとどまりません。衣類やコスメ、食料品など、実生活での利用にまで広がりを見せており、働き方の多様化にともない、定額で利用できるシェアオフィスやレンタルオフィスも急増しています。
さらには、従来のマンスリーマンションに加え、オンラインで予約して手間なく家具家電付きの物件に入居できる「OYO LIFE」、家具家電・アメニティ付きの家に定額で入居できる「ADDress」といったサブスク住宅も誕生しています。定額制のサブスク型サービスは、いまや不動産分野にまで拡大しているのです。
将来的にはサービスが入ってくる家が実現する?
注目すべきは、賃貸物件へのサブスク型サービスの導入です。たとえば、「OYO LIFE」に所有物件を貸し出すと、入居者は付帯サービスである「OYO PASSPORT」を利用できます。クーポンによりさまざまな住生活サービスを優待価格で利用できる暮らしのアプリで、入居者の生活向上に貢献します。
このほか、スマートロック搭載により、留守中でも宅配や家事代行を頼める物件や、おしゃれな家具家電を備え付けた物件など、サブスクをうまく活用することで新たな需要を喚起することができます。セキュリティやプライバシーへの配慮さえ怠らなければ、不動産テックの普及により、入居者の利便性が飛躍的に向上することは間違いないでしょう。
サブスク利用のメリット
サブスクを利用することで賃貸住宅の大家さんがどのようなメリットを得られるのか、解説します。
導入を考えていた設備のお試し利用ができる
新しく設備機器を導入するにはコストがかかります。差別化としての効果を得られなかったら…と迷う気持ちもあるでしょう。でも、サブスクならいつでもサービスの利用を中止できるため、試用のつもりで気軽に設備を導入できます。
いつでも最新のモノやサービスを入居者に提供できる
住まいのトレンドは、日々移り変わります。せっかく新たな設備やサービスを導入しても、年数が経てば再び入れ替えの必要に迫られます。サブスクなら、常に最新のモノやサービスを提供できるため、トレンドへの対応も容易になります。
高価格な住宅設備を所有するより初期費用が安い
空室対策は、ある程度の設備投資が必要ですが、最新や人気の設備を導入するにはかなりの初期費用がかかります。資金を準備するのが難しい場合にも、サブスクを利用することで、初期費用を抑えて人気の設備を導入することが可能になります。
メンテナンスの手間やコストが減る
住宅設備には、定期的な点検や故障時の修理といった費用がかかります。サブスクの場合、定額料金の中にメンテナンス費用が含まれていることが一般的です。万が一故障しても無償で修理や交換をしてもらえるなど、手間もかからずランニングコストの削減にもつながります。
処分の手間やコストがかからない
一度購入した家具や家電、設備を廃棄したり、入れ替えたりする際には、廃棄処分費が必要です。処分場へ持ち込む労力もかかります。サブスクなら、不要になったモノは返却するだけなので、廃棄にかかる手間と処分費をカットできます。
経費として毎月計上できる
月払いのサブスクなら、定額料金は毎月「支払い手数料」や「消耗品費」として経費計上できます。固定資産として計上する必要がないため、固定資産税を節約でき、資産管理など経理上の手間も削減できます。
物件の差別化に役立つサブスク
賃貸物件に取り入れることで差別化に役立つサブスクを、具体的なサービス名を挙げてご紹介します。
IoT
初期費用のかかるIoTサービスは、サブスクでの利用が最適です。
ラストワンマイル社の「まるっとひかりホームIoTプラン」は、インターネット回線を通じて家電を操作したり、ドアの施錠や解錠をしたり、ガスや電気の使用量を自動で制御することもできるサービスです。個人で導入するには設定が難しく、初期費用も高額になりがちなIoTサービスも、サブスクなら面倒な手間も費用もかからず、手軽に導入できます。
家具・家電
近年、マンスリー物件の需要が高まっており、家具や家電を導入するだけという手軽さから、マンスリー賃貸市場へ参入する企業が増加傾向をみせています。おしゃれな家具家電を取り扱う「CLAS」のサブスク型レンタルなら、マンスリーとしての活用だけでなく、初期費用を抑えてライフスタイルを楽しみたい入居者にも喜ばれます。
共有部分や各住戸にちょっとしたグリーンを飾るのも、物件の印象アップに効果的です。観葉植物レンタルの「GOOD GREEN」は、個人宅や賃貸物件にもサービスを提供しています。
セキュリティ
単身高齢者や女性の1人暮らしには欠かせないホームセキュリティも、サブスクなら入居者の需要に応じて手軽に導入することができます。「leafee」のホームセキュリティ、サブスクプランなら初期費用は無料、月額1,480円からスタートできます。14日間の無料おためし期間も用意されており、違約金なしでの短期利用も可能です。
費用削減に役立つサブスク
次に、賃貸経営の費用削減に役立つサブスク型サービスをご紹介します。
住宅設備
住宅設備は10年もすれば故障したり、不調が出たりと、修理や入れ替えを要します。サブスクなら、月額料金にメンテナンス費用も含まれているため、一時的な費用増大の負担がありません。東京ガスの「スミレナ」なら、電気代を削減できる可能性もあります。
そして、定期的なクリーニングをしないと、すぐに効きが悪くなるのがエアコンですが、エディオンの「エアコンレンタルサービス」なら修理代が不要。IoT技術でエアコンの利用日数を計測し、利用日数に応じた料金を加算するため、単身赴任や学生の1人暮らしが多い物件におすすめです。
住宅メンテナンス
建物は少しでも早く不具合を発見し、適切なメンテナンスを行うことで、資産価値を長く維持することができます。外壁や防水は10年以内で修繕が必要になるケースもあり、思わぬ出費に慌てることもあるでしょう。
株式会社OWNERS CLUB の定額制マンション修繕サービス「メンパク」は、15年間定額でメンテナンスを行うため、大きな資金調達なしで建物の状態を維持できます。傷が広がる前に補修するため、一度にまとめて大がかりな修繕工事を行うより、結果的に修繕費用を抑えることができます。
賃貸管理
サブスク型の賃貸管理サービス「RENOSYワイドプラン」は、不動産オーナー向けのアプリ「OWNR by RENOSY」で、大家さんの賃貸経営をサポートしてくれます。住宅設備が故障した際のメンテナンス費用を含んでいるため、修理にかかる費用を大幅に削減できます。株式会社GA technologiesが提供するサービスで、「RENOSY ASSETマンション投資」で購入した物件が対象ですが、今後類似のサービスはますます増えてくると予想できます。
契約内容はよく確認しよう!
定額制といっても、サービスごとに細かな料金体系は異なります。たとえば、メンテナンス系のサブスク型サービスは、基本料金が定額でも修理の内容によっては別途料金が発生することもあります。レンタルしていた商品の交換・返却時に手数料がかかるものもあります。
料金だけに限らず、交換回数の制限、契約期間の有無など、契約内容をしっかりとチェックした上で、短期的・長期的に効果を得られるかどうか、慎重に検討してください。
まとめ
サブスクがどのようなサービスか、ご理解いただけたでしょうか。サブスクはいまや一般的なサービスであり、今後ますますサブスク制のサービスは増えていくと考えられます。所有物件の差別化や経費削減の観点から、もし効果的だと思われるサブスク型サービスを見つけたら、一度お試しで導入してみてはいかがでしょうか。ただし、安易に選択するのではなく、契約内容もしっかりとチェックした上で、差別化や経費削減に有効だと思われるサブスクを導入するようにしてください。
この記事の監修者
いしわた さとみ
【資格】宅地建物取引士/2級建築士/既存住宅状況調査技術者/ホームステージャー
建築設計事務所、不動産会社、建設会社等での勤務を経て、現在は不動産・住宅・建設ライター、住宅営業、建設CADオペレーターとして活動。実家は建築屋。主婦で3児の母。
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