物件に新たな「価値」を生み出すリノベーション。大家さんがチェックしておきたいポイントをご紹介

監修中村 裕介

  • 公開日:
  • 2019年10月17日
  • 更新日:
  • 2019年10月17日
物件に新たな「価値」を生み出すリノベーション。大家さんがチェックしておきたいポイントをご紹介
中古の物件に、新たな「価値」や「機能」をプラスするリノベーション。最近では、中古のマンションを購入して、居住者が自由にリノベーションできる物件も増えてきています。今回は、賃貸物件の経営をしている大家さんに向けて、リノベーションの流れやかかる費用、注意すべき点など大家さん視点でのリノベーションの全体像をわかりやすくご紹介していきます。

目次

大家さん視点で考えるリノベーション

賃貸経営において、建物の経年劣化は避けられません。また、物件の間取りや設備も時間経過とともに時代に合わないものになっていきますし、物件が古くなれば、空室リスク、家賃の値下げリスクといった問題もでてきます。これらの問題解決方法の一つが、リノベーションになります。リノベーションを行うことで、古くなった物件の価値を上げて、収益性を高めることができます。

リノベーションとリフォームの違い

リノベーションとよく似た言葉にリフォームという言葉があり、この2つの言葉はあまり意識せずに使われていることが多いです。実際、リノベーションとリフォームの違いには法的な定義はありません。リフォームは修理・修繕など元の状態に戻すための作業を指し、リノベーションは目的に応じて間取りや設備などを作り変えて、物件の新しい価値を生み出す作業のことを指します。工事の性質上では、リフォームは壁紙の張り替えなど細かな変更が多く、リノベーションは間取の変更で壁を取り払うといった大きな変更になります。

リノベーションを考えるタイミング

リノベーションを考えるタイミングは、大家さんの考えによって異なります。しかし一般的には以下のようなタイミングでリノベーションが行われることが多いです。

・長期間空室が続いている場合
・物件全体が老朽化していて設備の故障や壁にヒビが入っているなどの場合
・賃借人が退去後に、原状回復のために大きな費用がかかる場合
・周囲に同じような物件が多く、差別化を図りたい場合

リノベーションを行う理由

上記の通り、多くのリノベーションのケースでは、「老朽化に伴って物件価値が低下している現状をなんとかしたい」という考えがきっかけになっているようです。老朽化により物件の価値が下がると、空室のリスク、賃料の値下げリスクが上昇して収益性が下がります。

大家さんがリノベーションを行なう主な理由は収益性の改善であり、収益性を改善するためには、空室を減らすか、賃料を上げるかのどちらかを行なう必要があります。効果的なリノベーションができれば、空室対策につながり、賃料を上げられる可能性も出てきます。

リノベーションを行うメリットとは

ここからは、リノベーションを行うメリットについて掘り下げていきます。

収益改善につながる

リノベーションによって物件の価値を高めて魅力的な物件にすることができれば、入居したい人が増えます。入居者が増加することで空室も埋まり、収益改善につながります。

家賃アップが見込める

物件は築年数により、家賃が下落していくことは一般的な考えです。しかし、リノベーションによって、物件に住み心地や機能性といった価値を付加することができれば、今までの家賃より高い家賃に設定することもできます。

入居者ターゲットを広げられる

リノベーションは、間取りや設備などの大きな変更が可能です。仕切り壁を取り除いて広々とした空間を作ったり、キッチンを対面式にしたりするなど、リノベーションによってさまざまなターゲットにアピールすることも可能です。

リノベーションの流れ

ここからは、実際にリノベーションを行う際の流れについて紹介していきます。

1.業者を選んで決める

まずはリノベーションを依頼する業者を選びます。業者選びのポイントは、マンション経営している大家さんであれば、マンションのリノベーションに実績がある会社を選ぶことです。数多くのマンションのリノベーションを専門とする業者の中から複数社を選び、それぞれの業者と直接話をして、自分の考えるリノベーションを実行してくれそうな業者を選びます。もしも自分に明確なリノベーションのイメージやアイデアがない場合は、さまざまな提案をしてくれる業者を選びましょう。

2.現地調査を行う

業者が決まったら、リノベーション業者が物件の現地調査を行います。現地調査では、天井の高さや排気口、排水管の位置の確認、キッチンやトイレの移動が可能かといった調査などが行われます。

3.デザイン・コンセプトを考える

現地調査を元に、リノベーション業者のスタッフとともに、実際のリノベーションのデザイン・コンセプトを考えます。業者は、大家さんからのヒアリングを元にリノベーションのデザイン・コンセプト案を作成します。ここで注意しておきたい点は、自分の好みで決めるのではなく、ターゲットとする入居者の大多数に受け入れられるデザインを選ぶことです。

4.プランと費用の相談

リノベーションのデザイン・コンセプトが決まったら、工事プランと費用の相談を行います。工事する箇所、使用する素材によって工事の予算が変わってくるので、プランの内容は、細かい点まで詳細に確認しておきましょう。プランに漏れがあると、追加工事が発生し、コストが増す可能性があります。

資金計画の相談(金融機関など)

費用がはっきりした段階で、リノベーションの資金計画を作成します。手持ちの現金を利用するケースもありますが、多くの場合、金融機関による融資を利用するのが一般的です。大手銀行をはじめ数多くの金融機関は、リフォーム資金の名目での借り入れに対応しています。特に政府系の金融機関である日本政策金融公庫は民間より金利面でお得に借り入れができます。

5.工事請負契約書の締結

リノベーションのプラン・工事内容・予算が決まり、資金の準備が整ったら、工事請負契約書を締結します。工事請負契約書とは、工事の金額と支払い方法について書かれた契約書で、基本的には設計図・仕様書・見積書などが添付資料として作成されます。契約前には、契約書の内容と見積書との相違点がないか、工期は明記されているかについて確認しましょう。

6.リノベーション工事開始

契約が終わり次第、リノベーション工事が始まります。リノベーション工事は、一般的に解体・再生・内装・美装・検査という工程を通じて行われます。全面的なリノベーション(フルリノベーション)の場合、まずはキッチンやトイレなど全ての設備を取り除いて、水道管や配線がむき出しになった状態(スケルトン)にします。

その状態から、新しい間取り、キッチンやトイレなど水回りの配管工事、電気の配線工事が行われます。その後、石膏ボードを床、壁に貼る下地工事、間仕切りの設置がされ、下地工事の後に、床板や建具など造作の取り付けや壁の塗装工事が行われます。

塗装工事などが終わり次第、キッチンなどの設備の取り付けや、フローリングが設置され、最後は綺麗にクリーニングが行われます。工事終了前に依頼者による検査で工事内容による確認が行われます。

7.工事終了・引渡し

検査を行って問題がなければ、工事終了となり、引き渡しが行われます。引き渡し時には、定期的な取り替えが必要なものなど、設備に関する説明が行われます。

リノベーションにかかる費用

リノベーションの費用は、工事内容や業者によって変わります。一般的な費用相場で言えば、1m2あたり平均10~15万円程度です。50m2程度の物件であれば、工事費用は約500〜750万円程度となります。またキッチン、トイレなどの設備は、グレードによって費用が異なります。

リフォームローンの金利を確認

リフォームローンを利用する場合、金利については事前に確認しておきましょう。特に無担保型のリフォームローンの場合、通常の金融機関の融資よりも金利が高くなる傾向があります。融資を受ける場合は、現在融資を受けている金融機関に追加融資の相談をすると、リフォームローンよりも良い金利で融資を受けられる可能性があります。

リノベーションにかかる期間

リノベーションにかかる期間は、設計期間を含めると平均で約4~5ヶ月くらいです。うち工事期間はおよそ1〜2ヶ月程度ですが、部分的なリノベーションの場合は数週間程度と、より短期の工事になります。

リノベーションの注意事項

ここからは、リノベーションにおいて注意すべき点について確認していきましょう。

耐震性を確認

物件の耐震性は、まず新耐震基準に適合しているかで判断されます。新耐震基準は、強い地震でも倒壊しない基準となっており、1981年以後に建設された居住用の建物は新耐震基準に基づいて建てられています。リノベーションを行う場合は、物件の耐震性と、リノベーションによって必要な耐震性が損なわれないかどうかを事前に確認しておきましょう。

建築構造や給排水設備も確認

築年数の古いマンションの場合、壁式構造と呼ばれる壁で建物を支え得ている建築構造の物件も多いです。この場合、建物を支えている壁を壊すことはできません。また、給排水菅を集約するパイプスペースの位置が固定されている場合は、トイレやキッチンなど水回りの位置を自由に決められないという制約もでてきます。このように構造上変更できないポイントについては事前にしっかりと確認をしておく必要があります。

専有部分と共用部分を理解しておこう

マンションには、物件所有者が単独で所有している専有部分と、エントランスや屋上、エレベータなどのマンション住民が共有する共有部分があります。個性的な部屋を演出して入居希望者にアピールすることは大切ですが、共有部分まで工事することはマンション規約で禁止されています。特にバルコニーや玄関ドア・窓の外側は共有部分のため自由に変更することはできないので、リノベーションの際は、専有部分と共有部分を知っておくことが必要です。

予算がかさんでしまう可能性も

リノベーションの事前調査を入念に行った場合でも、追加工事が必要になる可能性はゼロではありません。表面上からは確認できなかった排水管の劣化や石膏ボードの腐食などが原因で、補修などの追加工事が発生することはあります。このように追加工事による費用がかかる可能性があることは、あらかじめ認識しておきましょう。

まとめ

リノベーションは賃貸物件の価値を高めるための有効な手段です。リノベーションをうまく活用することで、物件の魅力が上がり空室対策になり、家賃を高く設定する可能性も出てきます。ただし、工事内容がターゲットとなる入居者の希望と合わなかったり、予定より工事費用が大きくなってしまったりする可能性があります。リノベーションを行う際は、デザイン・コンセプトを明確にする、慎重に業者を選ぶなど、やるべきことを一つ一つ確認して進めていくことが大切です。
中村 裕介

監修中村 裕介

【資格】宅地建物取引士/保育士

1983年福岡生まれ。上海復旦大学卒。

商社、保育園、福祉施設での勤務を経て、現在は不動産と旅行系の記事を中心に手がけるライター兼不動産経営者。実際に店舗・住宅を提供している立場から、不動産に関する記事を執筆しています。

※紹介されている情報は、記事公開当時の内容です。法律改正等により内容に変更がある場合もございます。