大規模修繕は計画が大事!費用感を知って、無駄の無い修繕計画を立てよう

監修逆瀬川 勇造

  • 公開日:
  • 2019年05月23日
  • 更新日:
  • 2020年12月25日
大規模修繕は計画が大事!費用感を知って、無駄の無い修繕計画を立てよう
物件を長く安全に維持するために必要な大規模修繕は、入居者が快適に過ごすためにも大切なことです。今回は大規模修繕を考えている大家さんに向けて、大規模修繕にかかる費用や、重要な修繕計画のポイントについて、例を挙げながらご紹介していきます。

目次

まずは大規模修繕の内容を知ろう

大規模修繕とは、一般的に「耐用年数を超えた複数の設備を、一定期間ごとに、同時に修繕する工事」とされます。たとえば、耐用年数10年程度の外壁を採用しているマンションならば、この工事を耐用年数12年程度の防水工事や15年程度の給排水設備工事等を同時に行います。

大規模修繕が必要な理由

大規模修繕工事を実施することで、美観をきれいに保てたり、建物の劣化を防げたりする効果があります。

外壁塗装工事と屋根工事、防水工事を実施した場合、建物の見た目がよくなり、空室率の改善や入居者の退去を防げる効果を期待できるでしょう。

一方、外壁にひび割れが生じているのにも関わらず、放置していると、美観の悪化から空室が増えてしまう可能性があるだけでなく、ひび割れから雨水が浸入することで建物の躯体が腐食し、耐久性を損ねかねません。

なお、これら大規模修繕の内容や必要な理由については以下のページで詳しく解説しています。

大規模修繕を行うタイミング

大規模修繕は概ね10~15年程度に1回の頻度で行うのが一般的です。

大規模修繕で対象となる外壁工事や防水工事、給排水設備工事等の耐用年数が概ね10~15年程度であることが多いからです。また、耐用年数に達していない場合でも、「空室が増えてきた」ならば、大規模修繕を検討してみてもよいでしょう。大規模修繕を実施することで各種設備が新しくなり、美観も向上するため、空室率改善の効果を期待できます。

ただし、たとえ満室であったとしても、耐用年数が超えた設備に関しては「不具合が発生する前に実施する」ことを念頭に置いたほうがよいでしょう。

大規模修繕は事前の計画が重要

まとまった資金が求められる大規模修繕は、事前の計画が肝心です。各種設備の耐用年数と前回の修繕工事の経過年数から、次の大規模修繕の時期を概ね決めておきましょう。

修繕計画を立てる際のポイント

修繕計画を立てるにあたって、修繕する内容と時期、費用の目安を把握しておく必要があります。例として挙げられるのは以下のとおりです。

補修箇所時期費用相場
外壁10~15年1,000~30,000円/m2
鉄部塗装5~7年3,000円~5,000円/m2
防水10~15年5,000円~8,000円/m2
給排水10~15年200万円~250万円
給水ポンプ15年80~200万円

上記の周期や費用相場を参考に、ご自分のアパート・マンションでは何年に一度のペースで大規模修正を行えばいいのかを考え、どのくらい費用がかかるかを計算してみましょう。たとえば、上記工事箇所をすべて工事するとして、面積を1,000m2、価格を相場の中心値と仮定すると、費用は以下のとおりです。

補修箇所費用
外壁15,000円×1,000m2 = 15,000,000円
鉄部塗装4,000円×50m2 = 200,000円
防水6,500円×200m2 = 1,300,000円
給排水2,250,000円
給水ポンプ1,400,000円
合計20,150,000円

修繕費用は計画的な積み立てを

修繕費用はローンを組むこともできますが、その返済で資金繰りが苦しくならないよう、あらかじめ積み立てておきましょう。毎月の積立額については、以下のような計算式で決めるとよいです。

大規模修繕工事総額÷大規模修繕工事周期(月)

先ほど例に挙げた工事を15年(180カ月)に1回の周期で行うとすると、20,150,000円÷180カ月で、概ね112,000円/月程度が必要であると計算できます。

大規模修繕に費用はどれくらいかかる?

大規模修繕工事にかかる費用について、公的機関によるデータも確認しておきましょう。

国土交通省が発表する相場とは

平成30年5月に国土交通省が大規模修繕工事の金額、工事内訳及びその設計コンサルタント業務の実施内容に関する実態調査を発表しています。管理組合等による大規模修繕工事の発注などにあたって、適正な実施の参考とするための指標をつくるのが目的です。

同調査によると、大規模修繕工事費用の割合は、

1戸あたり75~100万円が30.6%、100~125万円が24.7%
1m2あたり10,000円~15,000円が41.1%、5,000円~10,000円が31.8%

という結果が出ました。

場合によっては助成金や補助金も

マンションのある自治体によっては、工事内容次第で助成金や補助金を受け取れることもあります。具体的には、以下のような制度があります(なお、自治体によって実施状況は異なります)。

・マンション改良工事助成
・マンション耐震化推進事業による助成制度
・高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業
・断熱塗料・遮熱塗料を使った塗装工事

お住まいの自治体でどのような制度が実施されているのかを確認した上で計画を立てるとよいでしょう。

各費用の相場を把握しておこう

ここでは、より詳細に各費用の相場をお伝えしていきます。

調査、検査

大規模修繕前に調査や検査を行って修繕が必要な箇所を見つける必要があります。

これらの調査や検査には、施工会社やコンサルタントから無料で受けられる簡易的なものと、検査器具を使わなければわからない有料のものがあります。有料のものについては、マンションの規模によって費用が異なりますが、概ね20~100万円程度を想定しておくとよいでしょう。

足場の設置

外壁補修や塗装工事を行う場合には足場を設置する必要があります。足場の設置費用は、塗料が飛散するのを防ぐ飛散防止シートと合わせて、概ね600円~1,000円/m2程度を想定しておくとよいです。

外壁補修、塗装

外壁補修や塗装をせずに放っておくと美観を損ねたり、雨水が浸入したりすることにより、耐久性悪化につながるので怠らないよう注意してください。

外壁補修や塗装については、どのような補修を行うか、どのような塗装を採用するかによって費用が大きく異なりますが、費用相場は概ね1,000円~30,000円/m2程度で考えておくとよいでしょう。なお、一般的に単価の高い塗装は耐用年数が長く、外壁塗装の周期も長く設定することができます。

防水補修、塗装

ベランダの床や屋上の防水工事費用については、概ね5,000円~8,000円/m2を想定しておくとよいでしょう。ベランダについてはFRP防水工事(※)が採用されるのが一般的ですが、屋上の防水工事についてはアスファルト防水やシート防水など、どの工法を選ぶかによって費用が異なります。防水工事部分が劣化すると、雨漏りにつながりかねません。

※FRP…ガラス繊維等の強化材で補強されたプラスチックのこと。耐水性に優れているため、ベランダ等の工事に利用される。

コンクリート、タイル補修

タイルが剥がれているのにも関わらず放置していると、下地のコンクリートがむき出しになり防水性や耐久性の悪化につながります。また、タイルが浮いたまま放置していると落下して車や人にぶつかる重大なトラブルを引き起こす危険性があります。くれぐれも注意しましょう。

マンションの外壁にタイルを採用している場合、補修方法にはいくつかの種類がありますが、無色透明のクリアー塗装を施す工事の費用相場は概ね3,000円/m2程度です。タイルにひび割れがあるなどして張替えをする場合は、1枚あたり500円程度を見込んでおくとよいでしょう。

鉄部塗装

鉄部塗装の費用相場は3,000円~5,000円/m2程度です。外壁塗装時に鉄部も併せて塗装すると、美観向上に役立ちます。

給水、排水管の補修

給水管、排水管の補修は双方合わせて概ね200~250万円程度の費用を想定しておくとよいでしょう。給水管や排水管を補修せずにおくと水の出が悪くなり、生活に支障をきたすばかりか、場合によっては破裂して大規模な水漏れ、浸水に発展する可能性もあります。

給湯器、エアコンの交換

各戸ごとに1台ずつ設置されている給湯器やエアコンの交換費用は、給湯器が概ね8万円/台程、エアコンが10万円/台程です。給湯器の場合は交換せずに放置しておくとお湯の出が悪くなったり、エアコンの場合は効き目が悪くなったりします。

物件の状態をきちんと把握しよう

物件に必要な修繕はどこかをきちんと把握して、必要に応じた予算とスケジュールで計画を組みましょう。

業者選びは比較検討して慎重に見極めよう

大規模修繕工事は管理会社やゼネコン、修繕専門会社等が依頼先となります。いずれの会社に依頼するにしても、見積もりで提示された費用を確認するとともに、これまでの実績をホームページや電話、対面で確認してください。

見積もり提示時には、本記事で紹介した国土交通省の調査結果を参考に、相場と比べて高いか、安いかを判断します。もちろん、工事内容によっては相場より高くなることもありますが、その場合は何故高くなるのかを確認しておきましょう。なお、「1戸あたりの平均が100万円を超えるかどうか」を1つの判断基準としておくことをおすすめします。

本記事では、大規模修繕に関する各種費用や工事内容をお伝えしていますが、大規模修繕の見積もりを取る際には、業者に丸投げするのではなく、業者とコミュニケーションを取りながら、「最善の工事内容を」、「できるだけ安く」行うことを目指しましょう。

まとめ

大規模修繕について、公的データ等を参照しながら、各工事にかかる費用や工事の周期、事前計画の重要性等お伝えしてきました。大規模修繕工事はその費用が高額になることが多く、工事のタイミングと費用総額を想定して事前に積み立てておくなど計画的に進めていくことが大切です。

また、業者に見積もりを依頼する際には、各工事の内容と費用相場を把握した上で、丸投げするのではなくコミュニケーションを取りながら決めていくとよいでしょう。

大規模修繕はしっかり計画を立てましょう
複数の業者にプランを出してもらうことも大家さんの大切な仕事です

逆瀬川 勇造

監修逆瀬川 勇造

【資格】AFP(2級FP技能士)/宅地建物取引士/相続管理士

明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。

大学在学中に2級FP技能士資格を取得。
大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。

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