不動産テック、IoTなど不動産のトレンド、おさえていますか?
めまぐるしく変化している不動産業界。契約時の重要事項説明をビデオ通話などで行う「IT重説」や、不動産会社や大家さんの立ち合い無しで入居希望者が内見できる「セルフ内見」などはご存じでしょうか。技術が進化し、人々のライフスタイルもどんどん変化してきている今だからこそ、大家さんもおさえておきたい不動産に関するトレンドやサービスも増えてきています。
大家さんがトレンドを知ることの大切さ
初心者大家さんはもとより、長年に渡って賃貸経営を行っている大家さんに至っても、近年のトレンドは常に意識するようにすることは大切です。激変するマーケットの動きを把握することで、迅速な客付けにつながりやすくなります。
賃貸経営とは少し話がそれますが、たとえば、最近話題のスマートフォンでのキャッシュレス決済は、若い世代には日常風景となりつつあります。しかし、年配の方にはまだまだ馴染みがなかったり、ついていけなかったりするという方もいるようで、中には、現状の支払いで満足しているからキャッシュレス決済をする予定もないという方もいらっしゃいます。お客さんの立場であれば、そのスタンスでも問題はないでしょう。しかし、お店の立場とすれば、現状で満足しているからキャッシュレス決済の導入または導入検討をしないというのは、顧客の利便性やニーズをキャッチできていないと考えられます。
これは、賃貸経営にも同じことが言えます。トレンドを押さえたとしても、すべてのトレンドを取り入れるのは難しいかもしれません。しかし、顧客の利便性や満足度の向上を図るためには、トレンドを押さえて、大家さんとしてどんな取り組みができるのかを、日々考えることが必要不可欠です。時代の流れや顧客ニーズに即した賃貸経営は、安定した満室経営にもつながります。
不動産業界の変化と賃貸に関するトレンド
パソコンにくわえて、タブレット型端末やスマートフォンの普及が進み、20年ほどの間にわたしたちをとりまく通信環境は大きく様変わりをしました。その環境変化に伴い、不動産業界にも新しいトレンドが生まれています。
なぜ今までIT化されてこなかったのか
賃貸経営に限らず、不動産業界は今まで、ほかの業界と比べるとIT化が遅れていた業界といえます。それには、さまざまな理由が考えられます。不動産はスーパーマーケットの商品と異なり、毎日頻繁に取り引きされるものではありません。情報公開前に自社で契約をまとめたいという意識から、情報のアップデートに消極的な不動産業者が存在するなど、不動産業界特有の商習慣があるのも1つの理由といえます。また、不動産は現地に行って見なければわからないことも多く、それをインターネット上で情報提供するためには、写真や動画など大きなデータのやりとりが必要になります。これも、IT化が進まなかった理由の1つといえるでしょう。
しかし、すでに述べたように通信環境は大きく様変わりし、大きなデータのやりとりも容易にできるようになりました。また、環境変化に伴い、法解釈にも改訂が生じていますので、今後、不動産業界においてもIT化される部分は広がっていくものと考えられます。
大家さんが押さえておくべき4つのトレンド
大家さんが抑えておくべき4つのトレンドをご紹介します。これらのトレンドは入居検討者の利便性を高めるもので、大家さん単独で実行に移せるものもあれば、管理会社などの協力を要するものもあります。不動産の特性上、根強く残る商習慣は一朝一夕に変化するとは考えにくいです。そのため、すべてを取り入れるのは難しい可能性もありますが、検討および相談をしてみるとよいでしょう。
トレンド | 大家さん単独でできる | 入居者の協力が必要 | 管理会社・不動産会社の協力が必要 |
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IT重説 | 〇(自ら契約業務を行う場合) | 〇 | 〇(仲介の場合) |
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電子契約 | × | 〇 | 〇 |
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セルフ内見 | × | ー | 〇 |
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VR内見 | × | ー | 〇 |
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IT重説
IT重説とは、賃貸借契約の重要事項説明を、テレビ会議などのITを活用して行うことを言います。平成29年度から本格運用が始まったIT重説は、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」において、対面による宅建業法第35条の重要事項説明(以下、対面重説)と同様に取り扱われています。
なお、IT重説を対面重説と同様に取り扱うためには、パソコンやテレビ、タブレットなどの端末の画像を利用するなどして、一定の条件をすべて満たすことが必要になります。
IT重説はどんな層に有効?
IT重説の導入によって、遠隔地の方や、移動困難な状態な方などにとっては大きな負担軽減となります。また、場所と時間を合わせて集合する必要もないので、多忙な方にとっても隙間時間を活用して重要事項説明を受けられるため有効といえるでしょう。
IT重説を取り入れた際の注意点
IT重説自体には大きな注意点はありません。しかし、IT重説の導入は極端に言えば、入居者が物件に一度も足を運ばなくても契約締結ができてしまうことになります。後々のトラブルを避けるためにも、現地確認を必須にしたり、対面重説以上に周辺環境なども含めてていねいに説明をしたりと対策を講じておきましょう。
電子契約
不動産の電子契約とは、電子化した契約書類データにアクセスし、電子署名することによって契約締結ができる仕組みです。従来のように紙の契約書類を郵送でやりとりするよりも効率的かつスピーディに契約を進められます。
電子契約はどんな層に有効?
スピーディに契約ができるため、入居の申し込みから入居を予定している日までに日数的な余裕がない場合など、急な転勤などで入居を急ぐ方には喜ばれるでしょう。
電子契約を取り入れた際の注意点
子契約サービスの利用には費用がかかります。また、不動産会社や管理会社、入居者の理解と協力が必要になります。まずは複数の電子契約サービスを比較検討した上で、不動産会社や管理会社に相談してみましょう。
セルフ内見
セルフ内見とは賃貸物件の内見を不動産会社などの同行なしで、入居検討者が内見を行う仕組みを言います。内見の申込もインターネットで完結できるものもあります。
セルフ内見はどんな層に有効?
セルフ内見は、入居検討者が都合の良い時間に、賃貸の内見をマイペースに行うことができます。不動産会社のスタッフからあれこれ言われると、気兼ねしてしまうという入居検討者には有効なサービスです。仕事の合間などを活用して気軽に内見ができるため、多忙な方にも有効です。
セルフ内見を取り入れた際の注意点
入居検討者にとっては、マイペースで内見ができるとはいえ、物件を汚損される可能性などには注意が必要です。また、キーBOXの番号や、鍵の設置場所を入居検討中の一般の方に伝えることになるので、セキュリティ面へは特に対策が必要です。鍵の受け渡しの際に、セルフ内見を希望する人の身元確認や誓約書への署名などを行ってもらったり、内見時に保険加入をお願いしたりなど、不動産会社や管理会社とともに具体的な運用方法について相談しておく必要があります。
VR内見
VR(バーチャルリアリティ)とは、専用ゴーグルを装着して臨場感溢れる視覚世界を体感できる技術です。VR内見は、360度の物件映像をVRゴーグルで体験できることを指しています。VR内見の導入によって、実際に物件に足を運ぶ前に、物件の絞り込みができるなど、入居検討者は効率的に物件選びを進めることができます。
VR内見はどんな層に有効?
入居検討者のなかでも、現在は遠方にいたり、または多忙で内見にあまり時間をかけられなかったり、ある程度絞り込んでから内見をしたいと考える方には、VR内見は喜ばれるサービスでしょう。また、退去予定の部屋であるが、まだ入居中であるため内見ができないという場合にも、VR内見は有効です。
VR内見を取り入れた際の注意点
VR内見には、不動産会社や管理会社の協力が必要です。また、VR内見の準備をするために撮影するための機材の準備に手間がかかりますし、物件を魅力的に撮影するためには、スキルが要ります。自ら撮影するのではなく、専門業者に依頼する場合には費用もかかります。VR内見で伝えられることには限りもありますので、コストバランスを考えて検討されるとよいでしょう。
360°写真での内見
コスト面、または管理会社などの協力が得られないことなどで、VR内見の導入が難しい場合には、360°写真での内見も検討してみてはいかがでしょうか。360°写真での内見とは、360°カメラで物件を撮影した画像を入居検討者に見てもらう方法です。VR内見より臨場感は劣りますが、入居検討者が物件絞り込みをする際には大いに役立つでしょう。
管理会社へ相談してみよう
普段、自物件の運営をすべて管理会社に任せている大家さんも、近年の賃貸トレンドを意識して、入居者に好まれそうな物件をつくるために改善できる点がないか、管理会社に一度相談してみましょう。
まとめ
賃貸経営は、文字どおり「経営」です。賃貸物件の活用による事業の経営者として、顧客(入居検討者)の利便性や満足度を高めるための情報に日々アンテナを張り、経営のブラッシュアップをするのも大家さんの務めです。今回ご紹介したトレンドの中で、関心があるものについては積極的に不動産会社や管理会社に相談をして、導入の検討をしてみてはいかがでしょうか。
監修キムラ ミキ
【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー
日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。
大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。
大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。
その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。
URLhttp://www.laugh-dessin.com/
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