マイソク、ご存じでしょうか?
マイソクは賃貸経営のキーポイントとなるアイテムですが、マイソクと聞いて、その意味や重要性をすぐに思い浮かべられるでしょうか。そして、所有物件のマイソクについて、じっくりと自分自身で確認し、意見を盛り込んだことはありますか?
マイソクとは
マイソクとは、入居者を募集する際に使用する広告のこと。物件情報や写真が掲載されており、媒介契約を締結した仲介会社が物件調査や大家さんからの聞き取りなどを経て作成するのが一般的です。
不動産取引における重要アイテムであり、仲介会社の間ではかなり浸透しきった存在です。そして、マイソクのクオリティが空室を埋めるスピードを左右します。
マイソクは何に使われるの?
たとえば、賃貸仲介業者の店頭では窓ガラス一面にマイソクが掲示されていますし、仲介会社の営業担当が入居検討者に物件を紹介する際もマイソクを元に説明することがほとんどです。
仲介業者にとっても、エリアごとにいろいろな物件のマイソクを分類・保管しておけば相場などの把握に役立ちますし、入居検討者の希望に合致する物件を幅広く提示して話を広げることができます。
このほか、業者間の情報流通に欠かせないレインズに掲載したり、新聞などへの折り込みチラシとして使用されたりすることもあります。
マイソクをブラッシュアップするときに意識したい2つの視点
入居希望者・仲介会社のどちらかだけを意識したマイソクは、広告としては不十分です。それぞれの目線を意識したマイソクを作ることが、空室対策として重要です。
入居希望者を意識する
まずは、マイソクを見た入居希望者が、「内見したい」と思える内容にすることが大切です。とくに仲介会社が間に入る場合、大家さんが入居希望者と直接コミュニケーションをとることはまずありません。そのため、マイソクは大家さんから直接入居希望者に自物件をアピールできる数少ないチャンスであると言えます。ですので、成約につながるためによく精査しましょう。
仲介会社の営業を意識する
仲介会社は、入居希望者よりも先にマイソクに目を通します。そして、自社の売り上げにつながるような魅力的な物件であるかどうか、言い換えれば、すぐに成約できそうな物件かどうかを判断します。
営業担当が見て確証がもてれば、優先的に自物件を入居希望者に紹介してもらえることにもつながるでしょう。
基本のチェックポイント
写真や図面などを効果的に使い、目を引くビジュアルを意識したマイソクは非常に効果的です。カラーであることが理想的ですが、モノクロでも、物件の写真を大きく載せたり、レイアウトを工夫するなどの見せ方で魅力的なマイソクに仕上げることはできます。ただし、派手であればよいというものでもありませんので、物件の情報と一番のアピールポイントなど、伝えたい情報に優先順位をつけて、見やすいマイソク作りを心掛けましょう。
空室が多い物件という印象を与えない
同じ物件内の空室情報を一覧表にして掲載しているマイソクを見かけることがありますが、あまり空室が多いと、仲介会社・入居希望者共に不人気な物件であると受け取られる恐れがあります。もし空室が多いようであれば、代表的な空室の部屋番号だけを記載したり、最近成約した部屋番号を目立たせたりするといった方法を試してみましょう。
入居希望者向けチェックポイント
入居希望者にとって、マイソクに明記すべき具体的な例を見ていきましょう。
アピールポイントを明記
単なる事実や情報の羅列ではなく、売り込みたいポイントを明確に記載してください。たとえばファミリー向けなら学校の校区を記載しておく、一人暮らし向けなら近くのコンビニやスーパーまでの距離などを明記しておくとよいでしょう。
こうすることで、定めたターゲット層の成約率を高めることが期待できます。更にターゲットを絞り込むのであれば、「ペット可」や「楽器可」という文言も効果的です。
写真を大きく、わかりやすく
写真は物件の魅力を伝えるための強力な武器となります。物件の外観や部屋の写真、入居希望者に伝わりやすい明るさで魅力的に撮ることを意識しましょう。管理会社によっては、追加料金でクオリティの高い写真を撮影してくれるサービスなどもあります。どのような写真が必要か相談し、検討しましょう。
告知事項を明記
告知事項とは、契約前に入居希望者へ知らせておくべき内容のことです。告知事項としては、過去に同じ物件で発生した自殺や殺人などの事件があります。このほか、近所に暴力団関係や風俗店があったことなど、入居希望者にネガティブなイメージを与える事柄を総合的に「心理的瑕疵」と言い、隠したまま契約すると宅建業法違反となります。
告知事項については「いつまで告知しなければならない」「マイソクに正確に記載しなければならない」といった厳密なルールは存在しません。そのため「告知事項あり」程度の記載にしておき、問い合わせがあった際にはしっかりと説明することが一般的です。
設備内容を明記
エアコンの有無やキッチンなどの設備内容がわかるほうが、入居希望者に訴求しやすいです。マイソクを元に仲介会社がHPに情報入力することも考えられますし、検索対象となるキーワードとしても、設備内容についてはしっかり記載しておくことが大切です。
仲介会社の営業向けチェックポイント
仲介会社はマイソクを使って入居希望者に営業活動を行います。つまり、営業担当の営業ツールとしても使いやすく、また成約率が高まりそうなものを作成することが大切です。物件の強みを網羅した情報を充実させ、無用な問い合わせを極力排除することも目指したマイソクづくりができれば理想的です。
仲介手数料
「元付け0%・客付け100%」のように、仲介手数料の配分を明記することは、営業担当にはとても大切です。1件の賃貸借契約について発生する仲介手数料は家賃の1か月分が上限であり、複数の業者が関わるならば仲介手数料を配分しなければなりません。ですので、営業担当がマイソクを見た時点ですぐに仲介手数料が把握できるように明記しましょう。
広告料
広告料も前述の仲介手数料と同じです。広告料の支払いやそのほか謝礼キャンペーンなどが存在するのであれば、わかりやすく記載しておくことで、入居希望者へ自分の物件を紹介してもらうきっかけにできます。
HPへの物件情報掲載の可否
仲介会社は、自社のHPを広告ツールとして運用していることも多いため、自社HPへの物件掲載の可否も明記しておきましょう。記載がなければ、仲介会社から大家さんへ可否の問い合わせが面倒という理由から掲載されず、成約チャンスを逃すということも考えられます。今はスマートフォンで物件をチェックされる入居希望者も多数いますので、HP掲載ができる物件ですと成約率アップにつながる可能性もあるでしょう。
案内に必要な情報
媒介契約を締結した元付け業者がマイソクを作成・運用しているのであれば、元付け業者の連絡先や営業時間などの情報は明記しておくことも重要です。会社の代表番号だけでなく、物件担当者直通の携帯電話番号も記載しておきましょう。
入居希望者からの質問や申し込みにすぐ対応できなければ、せっかくの契約意志が薄れてしまい「返信が遅いから気になっていたもう1つの物件で契約を進めよう」ということにもなりかねません。
また、利便性を意識するならば、内見の際の鍵について管理会社で預かっているのか、現地のどこかに置いてあるのか、を記載しておくことも有効です。
まとめ
マイソクは、入居者募集の際に素早く空室を埋めるためにとても大切なツールです。もし、管理会社に作成をすべてお願いしているようでしたら、ご自身で一度内容を確信し、管理会社と一緒にマイソクのブラッシュアップを検討してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
吉田 成志
【資格】宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/マンション管理士/消防設備士
専任の宅建士として不動産仲介会社に従事した後、マンション管理士・消防設備士として独立。宅建士をはじめとした幅広い知識や経験を生かし、不動産売買や賃貸時に気になる疑問点の相談なども担当している。
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