大家さんが円滑に賃貸経営を行っていくための大切な要素の1つとして、管理会社との付き合いがあります。空室問題やトラブルが起こった時などに、管理会社と良好な付き合いができていれば、早めの解決へつなげることもできる可能性があります。今回は、管理会社と良好な関係を築いていきたいと考えている大家さんに向けて、管理会社と大家の役割の違いや、どういう付き合い方をしていくのがベストなのかを、詳しくご紹介していきます。
管理会社と大家さんの関係
管理会社と大家さんは、簡単にいうと「管理委託契約」を結んでいる関係であるといえます。つまり、大家さんの所有している物件の管理を管理会社に委託する契約を結んでいるということです。ここでは、管理会社と大家さんの関係から、それぞれの役割について解説していきます。
管理会社の役割
管理会社の役割を一言でいえば「物件の管理」となりますが、管理業務の中身は大家さんと結ぶ管理委託契約の内容によって異なります。ここでは、一般的な管理会社の役割についてご紹介しましょう。
建物の管理
・共用部の定期清掃 |
・退去後のクリーニング |
・修繕・リフォーム提案 |
など
入居者の管理
・入居者からの家賃回収 |
・滞納督促 |
・クレーム対応 |
・退去時の敷金精算 |
など
その他、管理会社によっては大家さん向け保険商品を取り扱っているなど独自のサービスを展開しているところがあります。
大家さんの役割
上記でご紹介した管理会社の役割は、本来は大家さんが行う役割です。「所有している物件の管理」という大家さんの役割を、管理会社に委託しているということになります。従って、管理会社などにまったく委託しない場合は、賃貸管理業務をすべて大家さんが行うのです。
また、賃貸管理業務の一部のみを管理会社などに委託することも考えられます。管理会社によっては、委託する範囲によって管理委託手数料が異なるプランを用意していることがあるからです。管理業務の一部のみを委託する例としては、家賃の回収業務や滞納督促、日常のクレーム対応、退去立会と退去後のクリーニングなどが挙げられます。
管理会社の種類
上述したように、管理会社は「賃貸物件の管理を専門とする会社」ですが、管理会社にも種類があります。例えば、不動産仲介業と管理業を兼ねており、不動産会社が管理業も行っているケースです。不動産会社は、それぞれの会社によって力を入れている仕事が異なります。従って、賃貸仲介がメインで客付け力は強いけれど、管理チームの人数が少なく修繕対応が遅い、退去後のルームクリーニングの対応が遅いなど管理力は弱いという特徴の会社なども考えられるでしょう。
そのほか、メーカーが施工した物件のみを管理するメーカー子会社や、不動産系のコンサルティング会社が管理を請け負ったり、ビルメンテナンス会社が管理業務のみを行ったりしていることがあります。
【参考】管理会社の規模による違い
管理会社の種類には、上記のような運営母体による違いのほか、規模による違いも考えられます。例えば、大手と呼ばれる規模の会社ではエリアごとに支店があったり、分業化が進んでいたりします。そのため、同じ会社で複数エリアの取り扱いができたり、「管理業務に専念する部署(子会社)」があるので会社独自のサービスを提供してくれたりするなどのメリットがあります。その一方で、規模が大きいため関係を築いた担当者が人事異動でいなくなってしまったり、管理できる物件が限られていたりするなどのデメリットもあります。
また、不動産会社によっては、数人規模の会社もあります。地元密着型で小規模な会社の場合、そのエリアの事情を熟知しているという強みがあります。そのため、地元つながりの業者ネットワークを利用した客付け・紹介、情報収集などにたけている場合があり、また、少人数ならではの型にはまらないきめ細かなサービスをしてくれるところもあります。ただし、エリアに熟知しているという強みがある一方で、人手不足や業務量過多による対応の遅れがあったり、過去のもめ事などによりほかの地元業者から取引NGが多かったりする会社も存在します。
大手会社・地元密着会社のいずれにせよ、管理を委託する場合は信頼できる会社であるかどうかの見極めが必要だといえるでしょう。
なぜ、管理会社との付き合いが大切なのか
賃貸経営を行う上で、管理会社との良好な付き合いが非常に大切です。管理会社は、あくまで賃貸経営における業務の委託先であり、賃貸経営の核は大家さんですので、重要な判断は大家さん自身で行わなければなりません。そのため、日ごろから管理会社とやり取りを行い、ご自身の物件の状況や管理会社の業務内容について把握しておくことが重要なのです。
大家さんの仕事でよく起こるトラブルとは
賃貸経営を行う大家さんの仕事上、よく起こるトラブルについてご紹介します。管理会社に委託しない業務については大家さんが1人で行わなければならないため、大家さんご自身が行う仕事内容をイメージしながら読んでいただけたら幸いです。
空室問題
賃貸経営において空室リスクは避けて通れない問題でしょう。基本的に、賃貸経営では入居者がいなければ家賃収入が入りません。入居者は結婚・転勤・卒業などの理由から退去することがあります。退去後、客付けができなければ空室が続くことになってしまいます。周辺に賃貸物件が多かったり、競合物件の方が良い条件だったりすると、なかなか空室が埋まらないこともあります。
家賃未納
入居者から支払われる家賃が未納であったり、不足があったりする場合があります。入居者がいても家賃が支払われなければ、賃貸経営の収入部分に大きな影響を与えてしまいます。滞納督促・家賃回収業務も大家さんの仕事で重要な業務です。
迷惑行為
賃貸物件の多くは集合住宅ですから、同じ建物内に複数世帯が暮らしています。人それぞれ生活の時間帯や部屋での過ごし方が異なるため、住人同士・近隣とのトラブルに発展してしまうこともあるのです。例えば、騒音やゴミ出しの仕方、無断駐車など、そして、設備関係のトラブルもよく原因として挙げられます。
このように、大家さんの仕事に関わるトラブルは多くありますし、原因もさまざまです。管理会社に管理業務を委託している場合、管理会社がトラブル内容を確認して対処する、もしくは対処法を提案するという流れになるでしょう。
管理会社と良好な関係を築くために大切なこと
上述した通り、賃貸経営においては管理会社と良好な関係を築くことがとても大切です。ここでは、管理会社と良好な関係を築くためのポイントについてご紹介しましょう。
管理会社の形態
管理会社の形態を確認しましょう。管理会社の種類によって、賃貸管理業務の中でも、できるものとできないものがあるからです。また、できる業務であったとしても、得意ではない可能性があります。例えば、管理体制が整っていて修繕対応が早く連絡をこまめにしてくれるけれども、リフォーム案件は実績が少ないという会社のように、管理会社の特徴を知ることが大切です。
定期的にコミュニケーションをとる
管理業務をすべて委託しているとしても、管理会社に丸投げではなく、適度なコミュニケーションを取ることが大切です。空室対策のために高額な資金を投じてリフォームを行うなど賃貸経営での大きな判断は、大家さんがしなければなりません。管理会社と定期的にコミュニケーションをとり、物件の状況や管理状況を把握しておきましょう。
管理業務の責任の所存を決める
管理会社へ物件の管理業務を委託する場合、「管理委託契約」を結ぶことになります。その契約内容や管理業務の範囲は、管理会社やプランによって異なります。管理委託業務内容の記載や管理委託手数料などの支払金額、中途解約の条件など、必ず管理委託契約書の内容をしっかりと確認した上で契約を結びましょう。
「媒介契約書」の内容は把握していますか?
賃貸経営で関係してくる媒介契約は、空室となったときの客付け営業を不動産会社に依頼するときに結ぶ契約のことです。大家さんと媒介契約を結んだ不動産会社は、契約締結に向けて営業活動を行います。媒介契約の際に取り交わす「媒介契約書」には、契約の期間や報酬の金額、支払い時期など重要な項目が記載されています。媒介契約書の内容をきちんと確認した上で契約を結ぶことをおすすめします。不明な点などがあれば、不動産会社に確認しましょう。
まとめ
賃貸経営における大家さんの業務は、入居者に関する仕事・建物に関する仕事など多岐にわたります。管理会社との関係を日ごろから良好にしておくことで、管理状況や建物の状況などを知ることができるのです。賃貸管理を管理会社に委託している場合でも、高額な資金を投じてリフォームを行うなどの賃貸経営における大きな判断をするのは大家さんです。管理会社に丸投げではなく、円滑に賃貸経営を行っていくためにも、管理会社と定期的にコミュニケーションをとり、良い関係を築いていきましょう。
監修花 惠理
【資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ファイナンシャルプランナー2級
大学卒業後、不動産会社や住宅メーカーの不動産部に勤務し、不動産賃貸・売買契約の他、社宅代行、宅地造成などの業務に携わる。現在は、不動産や金融関係の執筆をするWebライターとして大手メディアなどに多数寄稿。
初心者にもわかりやすい言葉で解説しています。また、将来に備えて夫婦で不動産投資や株式投資を行っています。
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