空室の原因を把握していますか?
空室がうまく埋められずに悩んでいるという方は、空室の原因をどのように把握されているでしょうか。
・賃料の見直しが必要 |
・築年数が古くなってしまった |
・周辺に競合が増えた |
空室の原因としては、いろいろな理由が考えられます。これら1つ1つの課題に対して適切に対応していく必要があるでしょう。一方、空室の原因として「入居者募集の方法が適切でない」ことが理由の場合も意外と多いです。この場合、どのように改善するとよいのでしょうか。
入居者募集から契約までの流れ
まずは、入居者募集から契約までの流れを確認しましょう。
・入居者募集開始 |
・広告を見た方から反響 |
・日程を合わせて店舗に来店 |
・物件の内覧 |
・気に入って貰えたら賃貸契約 |
各プロセスに問題がないか調べよう
入居者から契約までの各プロセスに問題がある場合は、最終の契約までたどり着くことができません。その場合、どの部分に問題があるかを明らかにすることが大切です。例えば、そもそも反響が少ない場合は、ネットに掲載している写真に問題がある可能性が考えられます。あるいは、家賃設定に問題があり、見た人が物件に興味を持てず、反響につながっていないのかもしれません。
その他、物件の内覧は多いのに契約が決まらない場合は部屋の清掃やフローリング、壁紙の修繕、設備の交換等を検討する必要があるかもしれません。このように、どの段階で、どのような問題が起きているかを分析し、対策していくことが大切だと言えるでしょう。
CPOとは
不動産会社に対して広告費を支払うことで優先的に案内してもらうなど、契約に向けて費用をかけて改善を施す際には「CPO」を意識することが大切です。CPO※とは「Cost Per Order」の略で、契約1件あたりに必要となる費用、つまりは契約単価のことを指します。
※CPOと、広告の費用対効果を測る指標として使われます。類似の言葉として、CPA(Cost Per Action)などがあります。
CPOを理解しておく重要性
賃貸経営は投資ですから、「かけた費用に対してどのくらいのリターンがあるのか」や「かけた費用をどのくらいで回収できるのか」という視点を常に持っておく必要があります。また、具体的に数値を設定して分析することで、どこに問題があるのかを把握しやすくなるというメリットもあります。
CPOの算出方法
CPOの算出方法は一通りではありませんが、ここでは、単純に契約単価を求める方法として、以下の計算式を用います。
例えば、300,000円かけて2室の賃貸契約を得られたらCPOは150,000円と計算できます。また、他に、CPRやCRといった指標もあり、CPRとはCost Per Responseのことで、投資した額に対して、反響がどのくらいあったかを示し、CRは反響数の内、どのくらいの割合で契約に至っているかを示します。
実際に計算してみよう
実際にCPOを求めてみましょう。ここでは、いくら広告費を使って、どの程度効果があったのかを調べるためにCPOを求めています。
| 不動産会社A | 不動産会社B | 不動産会社C |
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出稿部数 | 50,000 | 100,000 | 70,000 |
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広告費 | ¥300,000 | ¥450,000 | ¥250,000 |
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反響数 | 36 | 50 | 44 |
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レスポンス率 | 0.07% | 0.05% | 0.06% |
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内覧数 | 15 | 25 | 12 |
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CPR | ¥20,000 | ¥18,000 | ¥20,833 |
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契約数 | 5 | 2 | 7 |
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CR | 33.3% | 8.0% | 58.3% |
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CPO | ¥60,000 | ¥225,000 | ¥35,714 |
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※不動産会社AのCPO:¥300,000(広告費)÷5(契約数)=¥60,000
※不動産会社BのCPO:¥450,000(広告費)÷2(契約数)=¥225,000
※不動産会社CのCPO:¥250,000(広告費)÷7(契約数)=¥35,714
計算結果からわかること
上記計算結果を見てみると、不動産会社Bは、1件の成約に対して22.5万円も費用がかかっているのに対して、不動産会社Cは、3.5万円程度に抑えられていることが分かります。
上の図をもう少し詳しく見てみましょう。不動産会社Bは内覧者数が一番多いです。その理由は反響してくれた人の内、2人に1人は内覧につなげられていることが要因だと分かります。一方で、内覧から契約に至ったのはわずか8%と低くなっています。不動産会社Bは、なぜ、内覧から契約に至る数が少なかったのかを分析し、対策すればCPOを大きく改善できる可能性があります。
不動産会社Cは内覧から契約の割合が58.3%と非常に高く、それ故に、CPOの数値がよい結果となっていますが、反響から内覧につなげられている数は少ないです。この場合、対応に問題はないか等、不動産会社に聞いてみるといった対策が可能をすることで、CPOをさらに改善できる可能性があります。
CPOと合わせてボトルネックと対策を考えよう
ここでは、入居者募集プロセスを4つに分け、それぞれどんなところに問題があるか、その解決策として、どんなことができるかについてお伝えしていきます。
反響率
ネットであれば表示数、チラシであれば配布部数に対し、どのくらいの反響(お問い合わせ)があったかを示す数値です。これは、エリアや時期によって大きく異なるため、目安となる数値を示すことはできませんが、一定期間運用していく中で、前と比べて低くなったり、高くなったりした場合にはその原因を分析し、次回以降の広告に活かすようにしましょう。
来店率
広告を見て問い合わせをくれた人の中から、実際に来店する人の割合を示す数値です。例えば、10人問い合わせがあったのに1人しか来店がなかった場合には来店率10%です。理想としては、来店率は100%に持っていくべきですが、現実的なところとして、3組問い合わせがあったら、少なくともその内1組は来店につなげるよう改善するとよいでしょう(来店率33%以上)。
とはいえ、実際に電話に出るのは不動産会社の担当者のため、大家さん側からできることはあまりありません。複数の不動産会社でデータを取り、より来店率の高い不動産会社への依頼を検討するなどするとよいでしょう。
内覧率
来店してくれた人のうち、実際に内覧してくれた人の割合です。前提として、ここでカウントする来店数は、自分の物件を見て反響があり、来店してくれた人の数です。内覧率は100%にするべきで、そうなっていない場合には不動産会社の対応が悪かった可能性が考えられます。大家さんとしては、あまりに内覧率が低い不動産会社は利用しないようにするか、全体的に低いようであれば、成約時に担当者に渡す広告費を手厚くするなどして、優先的に案内して貰えるようにしましょう。
契約率
内覧してくれた人の内、成約してくれた人の数を表す数値です。不動産会社の営業力により異なる部分で、高ければ高い程よいですが、最低でも30%程度は確保してもらうようにしましょう。契約率についても、大家さん側でできることはあまりありません。契約率の悪い不動産会社は利用しないか、優先的に契約して貰えるよう、広告費を手厚くするなどするとよいでしょう。
入居者募集を考えるときの注意点
入居者募集では、基本的に不動産会社が負担する広告費が増えれば契約率が上がり、広告を減らせば契約率が下がると考えましょう。とはいえ、負担する広告費を決めるのは不動産会社です。CPO等データを取ってもらうようお願いすると共に、積極的に広告展開してくれる不動産会社はどこか選別することも大切です。
CPOをきっかけに管理会社と対等に会話をできるように
CPOを求めることで得られるメリットとして、管理会社と対等に会話できるようになるということが挙げられます。単純にCPOを改善することも大切ですが、そのボトルネックがどこにあるのか考察し、個々に対策していくことも大切です。なお、不動産会社によっては数値を提供してくれないこともあるかもしれませんが、その場合でも、CPOを意識した会話を行い、問題がありそうな箇所が分かったら改善を求めるようにしましょう。
まとめ
空室が埋まらず悩んでいるときは、入居者募集から契約までのプロセスを分析し、対策することで改善できる可能性があります。そのための指標として、CPOやCPR、CRといった数値についてお伝えしました。中長期的にデータを取ることで、さらに精度の高い分析や改善につなげることができます。空室改善の手法として、本記事でお伝えした数値分析を取り入れてみて下さい。
この記事の監修者
逆瀬川 勇造
【資格】AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士
明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。
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