「わたしの賃貸経営、大丈夫?」 押さえておきたい賃貸経営の安全性を分析する方法をご紹介

監修キムラ ミキ

  • 公開日:
  • 2020年06月29日
  • 更新日:
  • 2020年06月29日
「わたしの賃貸経営、大丈夫?」 押さえておきたい賃貸経営の安全性を分析する方法をご紹介
賃貸経営は不労所得といわれることもあります。しかし、実際は「経営」という言葉が示す通り、事業経営の一種とも言えます。問題が露呈してから焦るのではなく、主体的に賃貸経営の健康診断を定期的に行うことで、健全な賃貸経営をしていくことが肝要です。この記事では、相続などで賃貸経営を引き継いだばかりの新米大家さんに向けて、定期的に確認しておきたい賃貸経営の健全性をはかる指標について詳しくご紹介します。

目次

賃貸経営は経営である

賃貸経営は、その文字が表す通り、不動産を活用した事業の「経営」です。つまり大家さんは、事業における経営者ですから、経営状況の把握をしなければなりません。経営状況の把握をするためには、以下のような事項について確認が必要です。

収入

賃貸経営における収入源は、主に賃料収入です。そのほか、礼金や共益費、更新料も収入源となります。賃貸経営によって、賃料収入等がどれくらい得られるかを確認しなければ、必要経費をどれくらいかけられるかの検討もできません。賃料収入等がどれくらい得られるかを確認する際には、現状、満室経営であったとしても、仮に空室が発生した場合の予測も行っておくことで、余裕をもった見通しをたてることにつながります。

支出

賃貸経営における支出には、火災保険料、管理委託費、消耗品費、交際費、研修費、水光熱費(共用部分)、租税公課(固定資産税、都市計画税、印紙税、不動産取得税、所得税、住民税)など様々なものが挙げられます。そのほか、アパートローン残債がある場合には、アパートローン返済も必要となります。現状の支出にどのようなものがあるか、削減の余地があるものはないか、空室が発生した時に自己資金の持ち出しが必要か否かなど、今までの帳簿や決算書類を確認して状況把握に努める必要があります。

修繕計画

建物、設備ともに将来に渡り、新品であり続けることはできません。物件価値を維持するためには、計画的に修繕を行う必要があります。また、入居者ニーズの変化に合わせた、設備導入やリフォームも必要です。そのような修繕計画の有無を確認しておきましょう。修繕計画がある場合には、実情に合った内容となっているかを確認し、資金と照らし合わせて修正を加えることが必要な場合もあります。また、修繕計画がない場合には、将来にわたる修繕計画を作成し、必要資金をどのように準備していくかを検討しておきましょう。

借入

アパートローンの残債がある場合には、返済額と残りの返済期間の確認が必要です。また、一般的に、ローンは返済期間が進むにつれて、返済額に対する利息の割合が減少していきます。税務上、必要経費に計上することができるのは、利息のみです。しかし、返済額に対する利息の割合は減っても、金利そのものが引き下げとならなければ、返済額が減少するわけではありません。その結果、税務上、赤字になっていなくても、キャッシュフロー(実際の収支)上が赤字という、いわゆるデットクロスの状況になっているケースもあります。

賃貸経営の健康診断、その指標とは?

賃貸経営の経営者として、確認しておきたい事項は既に述べた通りです。確認した事項が健全かどうかを図る指標について、ご説明をしたいと思います。

解約率

解約率とは、言葉が示す通り、1年の間に、どれくらいの割合で解約があったかを示すものです。解約率は、今後賃貸経営を行っていく中で、空室発生の予測をする上でも重要な指標となります。

また、賃貸借契約は、契約期間が満了すると更新料を必要する物件もあります。しかし、別物件に引っ越す際には新たに更新料以上の初期費用が必要となるので契約期間満了ごとの移転は不経済であり、いったん入居者が決まると、数年にわたり賃貸借契約が継続するのが一般的です。

それにも関わらず、もし年々解約率の上昇が認められる場合、入居者ニーズを満たしていない可能性も考えられます。つまり、解約率の推移を確認することで、賃貸物件が入居者ニーズを満たしているかどうかも把握することができるのです。その場合、「入居者ニーズの調査を行い、新しいサービスの導入を検討することも必要ですよ」という注意信号かもしれません。

計算式と目標数値

解約率は、以下の計算式で算出します。

解約率(%)=1年間の解約戸数/総戸数×100

例えば、総戸数6戸の賃貸物件で、1年間の解約戸数が1戸であれば、
解約率は、1÷6×100≒16.6% となります。

住居系物件における解約率の平均値は20%~25%※という目安があります。この数値を大幅に上回るようであれば、賃貸物件が入居者ニーズを満たしていない可能性があります。

平均空室期間

平均空室期間とは、1年の中で、入居者が決まった部屋について、空室であった期間が平均してどれくらいの期間だったかを計算したものです。実際、空室が生じると、ルームクリーニングなど新たな入居者を迎え入れるための準備が必要であったり、入居者募集から入居手続きに至るまで時間を要するケースもあったりするため、一定期間の空室は生じざるを得ません。そのため、空室リスク回避の手段の一つであるサブリースにおいて、空室が生じたときに再免責期間(賃料保証を行わない期間。通常1~2か月)が設けられている場合もあります。

計算式と目標数値

平均空室期間は、例えば、1年を通じて入居者が決まった部屋の空室期間がそれぞれ3か月、4か月、5か月だった場合、以下のように計算をします。

(3+4+5)か月÷3部屋=4か月
     
サブリースにおける再免責期間は1~2か月ほどですが、それはプロ業者が行うからこその期間です。不動産会社などのサポートを受けるとしても、3~4か月ほどを平均空室期間の目安と考えてみるとよいでしょう。もしその期間を大幅に超えてもなお、入居者が決まらない場合には、理由とその対策を考えてみる必要があります。

平均居住月数

平均居住月数とは、どれくらいの期間、入居していたかを平均したものをいいます。平均居住月数を知っておくことで、ひとたび入居者が決まったらどれくらい賃料収入を得られる期間があるか予測することができます。

計算式と目標数値

平均居住月数は、過去に退去した入居者の居住月数を平均することで求められます。また、さらに平準化した数値を求めるためには、以下の計算式でも、求めることができます。

平均居住月数=100%÷解約率%×12か月-平均空室期間

平均居住月数は、シングル層で2~4年、ファミリー層で4~6年程度が一つの目安です。

運営比率

運営比率とは、満室経営時の賃料収入に対する運営費の割合をいいます。運営比率を把握することで、賃貸経営の効率性を把握することができます。

計算式と目標数値

運営比率は、以下の計算式で計算することができます。

運営費率(%)=運営費÷満室経営時の賃料収入×100

「2018年版 全国賃貸住宅実態調査」の調査結果によると、全国の運営比率平均は、単身用住居23.34%、ファミリー用住居24.35%となっています。運営費率は低いほど良いというわけではなく地域や物件タイプなどにより異なります。まずは、20%程度をひとつの目安と考えて、実際の運営費率と照らし合わせてみましょう。

借入がある場合、さらに診断したい指標とは? 

上記の指標に加え、借入がある場合は、賃貸経営の安全性も確認しておく必要があります。代表的な以下の項目を点検しておきましょう。

返済比率

返済比率とは、満室経営時の賃料収入に対して、返済額がどのくらいの割合を占めているかを表したものです。返済比率を把握して、高すぎる場合には対策を講じることで、アパートローン返済不能となる危険性を回避することができます。

計算式と目標数値

返済比率は、以下の計算式で算出します。

返済比率=年間アパートローン返済額÷満室時年間賃料収入×100

返済比率の目安は40%以下と考えておきましょう。それ以上になる場合には空室が生じたときに返済不能または、自己資金の持ち出しが必要になる可能性があります。

損益分岐点

損益分岐点とは、利益がちょうどゼロになる収支状況のことをいいます。損益分岐点を把握しておくことで、賃貸経営の状況に対してどの程度の改善が必要であるかがわかります。


損益分岐点は、以下の計算式で算出します。

損益分岐点=固定費÷{1―(変動費÷満室時賃料収入)}

この計算式で算出される数値を満室時賃料収入が下回ると、損失がでるという目安になります。

返済倍率

賃貸経営の利益に対して、アパートローンの返済額がどれくらいの割合となっているかを表したものです。返済倍率は、賃貸経営の安全性を測る目安となります。

計算式と目標数値

返済倍率は、以下の計算式で算出します。

返済倍率=年間利益(キャッシュフロー)÷ 年間アパートローン返済額

一般的には、返済倍率は1.3以上であることが望ましいといわれています。1.3未満である場合は、空室や突発的な支出が生じたときに返済不能または自己資金の持ち出しが必要になる可能性があります。

まとめ

様々な賃貸経営の指標があること、そしてその重要性をご理解いただけましたでしょうか。それぞれの指標を、さっそくご自身の物件に照らし合わせて算出し、賃貸経営の健康診断をしてみましょう!目安として挙げた数値に届かないものがあれば、対策を講じるポイントを発見できたことになります。より健全な賃貸経営を目指して、どのような対策を講じたらよいか、当サイト記事の参照や賃貸経営に明るい専門家への相談を通じて、考える機会をもち、賢い大家さんとしての一歩を踏み出していきましょう。
キムラ ミキ

監修キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。
大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。
大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。
その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

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