賃貸経営には欠かせない「利回り」。その理解と計算方法をご紹介

監修キムラ ミキ

  • 公開日:
  • 2020年01月29日
  • 更新日:
  • 2020年01月29日
賃貸経営には欠かせない「利回り」。その理解と計算方法をご紹介
賃貸経営をする上で、よく耳にするキーワードが「利回り」。利回りが高いほうがいいらしいという認識はしているものの、実際利回りとは何か、どうやって計算するのかはわからないという方もおられるのでは?そんな、利回り計算について理解したいと思われる方に利回りとは何か、利回り計算の方法、利回りの活用方法まで詳しくご説明します。

目次

利回りとは?

まずは、利回りとは何かについて、ご説明をいたします。利回りとは、投資した金額に対する収益割合を表したものです。賃貸経営の場合、例えば物件取得費に対して1年間の家賃収入がどれくらいの割合であるかを示したものであると、言い換えることができます。利回りは、物件の収益力を見る指標の一つと言われています。

利回りはひとつではない!

利回りについて、前項で大まかにご説明をしました。しかし、実は、利回りはひとつではありません。例に挙げた利回りは「表面利回り」と呼ばれるもので、その他にも「実質利回り」、「想定利回り」などがあります。この記事では、「表面利回り」、「実質利回り」についてさらに具体的にご説明をいたします。

表面利回りとは

例にもあげた表面利回りとは、グロス利回り、単純利回りともいわれます。物件の大まかな収益力をとらえるために使われる指標です。

表面利回りの計算式

表面利回りは、以下の計算式で求めることができます。

表面利回り(%)=年間収入÷購入金額×100

例えば、3,000万円で物件を購入し、年間の家賃収入が360万円であった場合、表面利回りは12%となります。実際の入居状況による家賃収入を使って計算した場合が表面利回りです。なお、満室を想定した家賃収入を使って計算した場合には、想定利回りとなります。

実質利回りとは

利回りには、「実質利回り」もあります。実質利回りは、ネット利回りとも言われます。実質利回りは、表面利回りと異なり、諸費用なども計算に入れて算出することになるため、より正確な収益力を判断する指標と言えます。

実質利回りの計算式

実質利回りは、以下の計算式で求めることができます。

実質利回り=(年間収入ー年間諸費用)÷購入金額

実質利回り計算時の、年間諸費用とは

計算式の中に出てくる年間諸費用とは、実際の支出を伴う必要経費のことをいいます。年間諸費用には、以下のようなものが挙げられます。

【年間諸費用】
・火災保険料

・管理委託料
入居者募集、賃料回収代行、賃料延滞やクレーム対応、共用部の清掃等を管理会社に委託する場合に必要となる費用

・消耗品費
コピー用紙や文房具など

・通信費
入居者や取引先などと連絡を取るためにかかる電話代やインターネット利用費用など

・交際費
オーナー会の参加費や取引先との会食代など

・研修費

・水道光熱費
共用部におけるもの(共用廊下の電灯などにかかる電気代など)

・修繕費
劣化設備の交換、大規模修繕などのために支出する費用

・借入金利子
アパートローンを借り入れている場合、その利子が必要経費となります。ただし、キャッシュフローの実質利回りを計算する際には、元本も合わせて諸費用に入れて計算します。

・租税公課
必要経費となるのは、固定資産税、都市計画税。大家さんの所得税、住民税は必要経費とはなりません。賃料収入を100%利益にすることはできません。なぜなら、例に挙げたような年間諸費用が必要となるからです。賃料収入から、諸費用をから差し引いて、実質利回りを計算することで、表面利回りでは表すことができない、物件がもつ実質的な収益力を知ることができます。

仮に年間諸費用が賃料収入の10%であるとすれば、表面利回りで例に挙げた(物件3000万円で物件を購入し、年間の家賃収入が360万円)の場合、計算式にあてはめると実質利回りは10.8%となります。

表面利回りと実質利回りの乖離を知ろう!

前項で、表面利回りと実質利回りの計算例をあげましたが、ここでは、物件事例を挙げて、さらに詳しく2つの利回りを計算し、その数字を比較してみたいと思います。

物件Xのプロフィールを以下のように設定して、実際の計算を進めてまいります。
購入金額※13,600万円
諸費用
(必要経費)
火災保険料10万円/年
管理委託費21万円/年
消耗品費1万円/月
通信費1万円/月
交際費1万円/月
研修費1万円/月
水道光熱費1万円/月
返済額※214万円/月
固定資産税※320万円/年
※1:新築鉄骨造アパート6室(ワンルーム)家賃月額6万円で現在の入居状況は満室。土地は相続で取得。
※2:借入金3,600万円返済期間35年。金利3%における概算値
※3:固定資産税評価額:土地(200m2未満)1,000万円、建物2,500万円概算値

物件Xの表面利回り

【利回り算出に必要な項目】
購入金額3,600万円
年間収入432万円(6万円×12か月×6戸)
【計算式】
表面利回り:432万円÷3,600万円×100=12%

物件Xの実質利回り

購入金額3,600万円
年間収入432万円
年間諸費用
(必要経費)
火災保険料
10万円
管理委託料21万円
消耗品費12万円
通信費12万円
交際費12万円
研修費12万円
水光熱費12万円
借入金返済168万円
固定資産税20万円
※年間諸経費合計:279万円

【計算式】
実質利回り:(432万円-279万円)÷3,600万円×100≒4.25%

計算例を見てみると、表面利回りは12%である一方、実質利回りは4.25%となっており、大きな乖離があります。利回りは、物件の収益力を知る指標ではありますが、どのような条件で計算されているかを確認することが大切であることを知っておきましょう。

利回りを意識したいのは、どんなとき?

利回りには、いくつかの種類があることを踏まえた上で、以下の3つの段階において、利回りをどのように役立てることができるかについてご説明をいたします。

物件取得時

物件の取得事由を相続と、購入に分けて考えてみます。

相続

賃貸物件を相続した場合、このまま賃貸経営を継続していく方がよいのか、継続するにも修繕などをした方がよいのか、それとも売却をした方がよいのかなど判断をする必要があります。現状の入居率や諸経費などを踏まえて、実質利回りを算出し、判断材料としてみると良いでしょう。

購入

賃貸物件をこれから購入して、賃貸経営を行うことを検討している場合には、購入していい物件かどうかを判断する指標として利回りを役立てることができます。満室時を想定した表面利回り(想定利回り)であることが一般的です。つまり、空室率が考慮されていないということです。より実情に近い指標を得たい時には、現状の入居状況について調べた上で、前項の事例における諸経費や実際の借入金返済の予定金額などを用いて、「実質利回り」を計算しておきましょう。

賃貸経営中

利回りは、物件取得時のみに役立つものではありません。物件取得時に想定した利回りと、現状の利回りに乖離がないかを確認するためにも役立つことになります。賃料収入が低下(入居率の低下、家賃の引き下げ)、諸経費支出の増加などによって「実質利回り」は低くなります。定期的に利回りを確認することで、賃貸経営における状況変化に気づき、対策を講じることができます。

出口としての売却検討時

賃貸経営の出口戦略の内、売却を検討する際にも利回りは重要なポイントです。購入の際に、利回りを確認するのが重要と述べましたが、投資家は物件取得時に多くの場合、利回りを確認します。そのため、利回りの低い物件は、投資家から敬遠される可能性もあります。現状の利回りを計算してみることで、物件価値を大まかに把握することにもなりますし、より高値で売却するためにどのような経営改善が必要かを考えるきっかけにもなるでしょう。

利回りを意識する上で、留意したいこと

利回りは、物件の収益力を判断する指標であるとはいえ、利回りが高いからといって、必ずしも収益力が高い物件であるとは限りません。一番大きな理由は、空室率が考慮されていない可能性があるからです。極端な例を挙げれば、利回りが高くても、家賃が高すぎて、入居率が著しく低ければ収益にはつながらない可能性が高くなります。

取得時、特に購入時には、利回り計算の前提条件がどのようになっているか(家賃が適正か?等)について、よく確認し、提示されている利回りを鵜呑みにしないということが肝要です。また、広告などに掲載してある利回りは満室時想定のものであることが多いため、入居率が低下した際の利回りについても計算して、判断材料とされるとよいでしょう。
賃貸経営中や売却検討時においては、投資家から敬遠されない利回りを提示できるように、日頃から物件価値向上のために、どんな工夫(入居率の向上や家賃維持等のため等の工夫)が必要かを考えることが大切です。

まとめ

今回の記事でご説明をした通り、利回りは、物件の収益力を確認する指標です。ただし、その利回りが表面利回りなのか、実質利回りなのかによって、持つ意味が異なります。また、前提条件などによって、利回りの値は異なってくることになります。利回りの高い低いに踊らされることなく、あくまでもひとつの指標として捉えつつ、賃貸経営に活用していくことを心がけましょう。
キムラ ミキ

監修キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。
大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。
大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。
その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

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